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高齢者のシーティング2
モジュラー車いすを基本とした車いすの選定・適合方法            東京都立保健科学大学   木之瀬 隆

はじめに
 車いすは長い距離を歩けない高齢者から重度障害のある人まで広い範囲で使われている。使いはじめのきっかけは、高齢者の場合、家族が「家のおばあちゃんが歩くのが少し大変だから、軽くて、安くて、小さい車いすがほしい。」という目的で選ぶケースが多い。このことは車いすに座る利用者のニーズでなく、介護者のニーズで車いすが決まることを示している。スリングシートの車いすは、移動用としての短時間の使用では問題は少ないが、椅子の代わりとして用いるとさまざまな問題があることを前号で紹介した。それらの問題を解決するのが車いすシーティングの役割であり、使われる車いすは使用者の身体寸法や使用目的や座位姿勢に合わせたものが必要となる。 しかし、介護保険では介護者のニーズはどうにか満たしつつあるものの、要介護者が自立的生活を営みたいと思い介護保険を利用する場合は、十分に使いやすい制度とはいえない。同様に貸与される福祉用具も自立的生活支援のために有効な福祉用具が十分そろっていない。
 車いすについては介護保険開始と同時に高品質なモジュラー車いすがレンタルされるようになり、利用者や介護者のニーズに合わせられる種類が増えてきた。それらの基本的な考え方と、車いすの選定・適合方法を紹介し、要介護度に合わせた車いすの使い方について解説する。

1.指標となる椅子座位姿勢
 人が椅子に座るときの姿勢は、横からみると、椅子に深く腰掛けて腰の部分が椅子の背で支えられ、床に踵がしっかり付き、股関節部、膝関節部、足関節部が約90度に近い姿勢である(112。また、正面からみると、頭部が真直ぐで、左右の肩や膝の高さが対照的な位置にある。この指標となる姿勢は骨盤が重要な役割を持ち、この姿勢から前に傾くと食事や作業をする姿勢になる。また、この姿勢から後方へ倒れると休息時の姿勢となる。
  しかし、スリングシートの車いすに座った座位姿勢ではスリングシートのたるみと座面の角度により、座った始めから骨盤が後傾した状態になる(図2。高齢障害者の場合には、その姿勢から身体を起こす筋力がないと、食事の時に背もたれにもたれたままで取ることになる。それは「おいしく食べられない状態」を車いすで作っていることになる。また、車いす座位姿勢は椅子座位姿勢と比べると車いす走行性に合わせた姿勢となり、座って食事や作業を行うには不向きといえる。食事や作業活動を行う際には、座と背のしっかりした椅子を用いるのが基本である。

2.簡易座位能力分類とシーティングの対応
 簡易座位能力分類は高齢者が椅子・車いすに座る能力を施設職員やケア・マネージャーが簡易に評価できるように開発したものである。介護保険の身体拘束ゼロマニュアルでは車いすの選び方の項目で使われている。また、医療機関で用いる褥瘡対策診療計画書では、日本褥瘡学会による褥瘡対策の指針の中でイス上での対応に使用されている。

@座位に問題なし:座位姿勢が安定し両手が自由に使える。また、自力で姿勢を変えることができる(表1。座位姿勢に問題がない場合でも、車いすの座面と背をしっかりした基本いすにすることが重要である。(図3-1。指標となる椅子座位姿勢に車いす座位も近づける必要がある。
A座位に問題あり:姿勢がしだいに崩れ、手で身体を支える状態。または自分で姿勢を変えることができない状態を指す。車いすに座り自分で臀部の位置を変えられない利用者は、臀部が痛くならないような臀部全体で体重を受け止め滑り座りになりにくい臀部形状型クッションを使用することで抑制帯をはずすことができる。(図3-2。次に、斜め座りになってしまい、横方向に倒れる場合は車いす専用の側方パット類でサポートする(図3-3。モジュラー車いすの背は調節ベルトで脊柱のカーブに合わせられるものや座位補助具といわれるパット類や背クッションが取り付けられる。一般の枕やクッションのみで車いす座位姿勢を保持することは困難である。
B座位がとれない:車いすに座った段階で身体に痛み等の不具合が生じ、頭部や体幹がすぐに倒れてしまう状態。重度の寝たきり状態の場合は座位保持装置付き車いすや座シートと背が同じ角度のまま、全体が傾くティルト機能とリクライニング機能を併用できるモジュラー車いすを使用する(図3-4。一般のリクライニング車いすでは、座位のとれない利用者を無理に座らせると滑り座りになるため抑制帯が必要であり、座面に仙骨部が接触するために褥瘡をつくるケースが多い。

3.モジュラー車いすと車いす製作方法による分類
 車いすは使用目的やJIS規格で分類されている。ここではモジュラー車いすと車いす製作方法における車いす分類をシーティングの視点より紹介する(図4
@レディメイドの車いす:一般の普通型車いす、介護用車いす(駆動輪が小さいタイプ)、背のみが傾くリクライニング車いすを指す。または、既製品の車いすで病院や施設で使われている車いすであり、介護保険でレンタルされている。
Aモジュラー車いす:モジュラー(modular)車いすとは車いすの各部品を単元化しておき、これらの部品を目的によって選択、調節し組み立てられる車いすを指す(図5-1
  簡易モジュラー車いすとは、モジュラー車いすの特徴としてフットレストのスイングアウェイ、アームレストの簡易着脱、肘掛け、座面の高さ等、一部調整機能のある車いすを指す。介護保険開始に伴いモジュラー車いすもレンタルされている。シーティングに配慮されたモジュラー車いすの導入により、要介護者の自立度を高め、トランスファー等の介護者の負担を軽減できる。
Bオーダーメイド車いす:身体の大きさや身体機能、生活目的に合わせてオーダーメイドで作られる車いすを指す。一般に身体障害者手帳を持つ障害者が更正相談所で判定を受けて作る車いすである。介護保険開始前は、高齢者でも身体障害者手帳の1、2級があれば作ることは可能であったが、介護保険開始後は難しい状況である。理由は身体障害者福祉法では、介護保険が優先されるために、オーダーメイドで作ることが難しくなったということである。しかし、本来ならば介護保険の既製品の車いすが合わない場合ならオーダーメイドの車いすが製作できなければならない。

4.車いすの選定・適合方法
  車いすの選定は生活の中での使用目的を明確にすることが重要である。その上で高齢者の場合は車いすの椅子機能を考えて選ぶことが重要になる。また、車いすを選定する際、自立的に使用するのか、介助的に使用するのか、または、車として使うのか、椅子として使うのか、判断する必要がある。
 車いすの選定を行うには、始めに、本人の身体的、知的能力(要介護度等)のアセスメントを行う(図6。利用者が自分で操作し、自立的生活を図る場合は、@身体寸法、A移乗方法、B座位姿勢、C操作方法が適合しなければならない。また、どのような環境で使用するのか、ベッド等の他の用具との関係に問題ないかチェックする。介助者が操作する場合は介助者の能力を把握することが車いす選定では重要になる。
  特に移乗方法は重要で、利用者が自分で車いす、ベッド、トイレの移乗ができることで身の回りの生活は自立することになる。そのために、モジュラー車いすはフットレストのスイングアウェィやアームレストの脱着が簡単にできるようになっている。また、移乗の負担が少ないことは介護負担の軽減になり、重度障害者の寝たきり状態を少なくすることができる。また、実際には身体寸法に合わせたモジュラー車いすと車いす専用クッションを用いることで座位に問題のあるケースの大半は問題が解決する34。このことは、車いす上での身体拘束のほとんどが解決することになる。座位がとれないケースはティルト・リクライニング機能付きのモジュラー車いすを適合調整することで座位保持が可能になる。変形や褥瘡のあるケースは医療機関でのチェックと合わせて褥瘡予防機能の高いクッションや座位保持装置の対応を行う必要がある。

5.簡易座位能力分類と要介護度に合わせたモジュラー車いす
 車いす座位能力分類と要介護度の身体機能の関係は、座位に問題なしのレベルでは要 支援、要介護1でどうにか立ち上がりや歩行ができる状態である(表2。対応する車いすは簡易モジュラー車いす(図5-2や標準型車いすに車いす専用クッションを使用する。スリングシートのみの車いすでは移動した先で椅子に移すことが必須である。座位に問題ありのレベルは要介護2,3で立ち上がりや歩行などが一人では難しいレベルであり、シーティングの対応が必要になる(図5-1。簡易モジュラー車いすの調整範囲で十分でない場合は利用者の全身に合わせられるモジュラー車いすを使用し、褥瘡のリスクのある利用者には減圧用のクッションを使用しなければならない。座位がとれないレベルでは要介護4、5レベルであり、 多くは寝たきり状態で普通型車いすには座れない状態である。座位の安定性を高めるためにティルト・リクライニング機能のあるモジュラー車いすを使用し、食事の前後時間ではティルトを最大限に利用して座位をとる必要がある(図5-35。このレベルの身体機能では身体障害者手帳の身体障害1、2級に相当するため、モジュラー車いすで適合調整できない変形や拘縮がある場合は、オーダーメイドの車いすと座位保持装置を使用しなければならない。

6.まとめ
  介護保険では在宅利用者はレンタルでモジュラー車いすを選ぶことができる。関わるケア・マネージャーや介護関連職が、高品質な福祉用具の情報を持つことが重要である。その上で、車いすシーティングの知識と実技技能を修得していく必要がある。また、入所施設ではケアプランの中で福祉用具の活用をアセスメントすることが重要である。筆者が指導している施設では福祉用具活用をケアプランの中に位置づけて、「車いすを変更したことで、日中の座位時間が延長できた。食事動作が自立して行えるようになった。」などの実際的な対応がなされている。

文献:
1.廣瀬秀行、木之瀬隆、浅海奈津美、清宮清美、佐藤真理子:車「いす」について考えてみましょう、(財)テクノエイド協会.1999.3
2.木之瀬隆、廣瀬秀行:高齢者の車いす座位能力分類と座位保持装置.Rehabilitation Engineering 13(2): 4-12,1998
3.木之瀬隆、廣瀬秀行:高齢者の車いす座位と抑制帯について、第15回リハ工カンファレンス講演論文集、203-2062000.84.木之瀬隆:高齢者のレンタル車いすのあり方(介護保険のレンタル車いす)、第15回リハ工カンファレンス講演論文集、395-3982000.8
5.木之瀬隆、廣瀬秀行:高齢者のモジュラー車いす、理学療法学第283号 173-176 2001.5
6.シーティングシステム研究会http://www.metro-hs.ac.jp/~kinose/index.htm

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