魔導時空遊園物語 prologue 誰も知 らない遊園地
| プロローグ 誰も知らない遊園地
−声− フロストハイランドの北方は、すべて険しい山岳地帯であった。極寒地帯で誰も住まない。そんな山奥になぜかとってもファンシーなダンジョンがあった。ぷよぷよの魔物をかたどったオブジェが頂点に据えられ、積み木のおもちゃのような可愛い建物が、赤茶けた岩山に囲まれた中にポツンと建っていた。 建物のほかは岩石地帯だ。春先で雪はないものの、ふきっさらしの大地はかなり冷え切っている。そこに本当にぽっつんと置かれただけのようなこの建物は、非常に寂しげに見えた。
さて、その建物を上空から見下ろす影が二つあった。いや、正確には床一面が岩石地帯の映像と化したスクリーンを通してそれを見ている。場所は、そのスクリーンに写るダンジョンの地下20階。「ぷよぷよダンジョン」と名づけた建物の地下にサタンはダンジョンの事務所を作っていた。 自称魔界の帝王サタンはこれからこのダンジョンを世に公表し、愛しのカーバンクルちゃんと未来の妃アルルを罠にかけ、いつも通りデートをするつもりでいた。その公表を今回はもももに頼んでみようと(ただの気まぐれである)、サタンはこの場にわざわざもももを呼んだのである・・・。
「無理なのー」 もももは、感情のない声でキッパリと言った。サタンはガクッと頭を下げた。もももはさらに続けた。 「こんな山奥の地図にもないようなところ、誰も来ないのー。鉄道もないしー、魔方陣の包囲外なのー。風が凍ってるから飛空挺も無理ー。交通料金どころか入場料も取れないー。あきらめるのー」 『まてぃ、コラ! 言わせておけば勝手なことばかり抜かしおって!』 ポコッ、とサタン様はもももの頭を殴る。殴ってから気づいたが、もももの頭には角がある。中指にはめた指輪の石が運悪くもももの角に当たり、もろくも砕けた。 『あああ――――――! 買ったばかりの幸運を呼ぶ伝説の宝石“フラワーストーン”がぁぁ!!』 “フラワーストーン”と“ぷよぷよダンジョン”を使って実行するつもりだった、新たなサタンさまの“ランデヴー”計画にピシリとヒビが入った瞬間だった。そして、その計画は次の言葉で崩壊する。 「お言葉だけどー、本物のフラワーストーンはもももの角より硬いのー。そんな手には乗らないのー」 補足しておくが、もももはこの時「高価な品物を壊された」と弁償代を突きつけてくる古臭い詐欺には引っかからないよ、と言いたかったのだ。非常識なサタンにそんなことが理解できたかは全くの謎だが。 『な、なにぃ!? ニセモノだと!? しかしこれは、のほほ通販から純粋な“フラワーストーン”だと紹介されてたから、800万Gも払って・・・ッ』 「・・・のほほ通販は詐欺商売で有名な行商なのー。お客さんはー、担がれたのー。カケラから判断するにー、実際の価値はー、・・・10Gぐらいー。ただの石ー」 『のほほ、ゆるさ―――ん!!』 あんたがアホや、という突っ込みはこの際聞こえないみたいだから言っても無駄だ。 『しかし、こうなったら意地でもこのダンジョンで金を稼がなくてはならなくなってきたな・・・』 にわかに真剣な表情になるサタンに向かって、もももは相変わらず非情である。 「だから無理なのー」 『だからなぜに!!』 「さっきも言ったけどー、町から離れすぎてるのー。最寄の村まで300kmなんてフザけてるのー。お客さん、商売ナメてるのー。ありんこ一匹来ないー、絶対ー」 散々な言われようだった気がするが、この程度では魔族の精神を攻撃したことにならないらしい。むしろ、さっきの方が効いている? ちなみに、300kmとはだいたい広○−大○間ぐらいである。 『ふっ、ナメているはキサマの方だ。そもそもキサマはアルルと言う女をわかってはいまい? 我が妃はダンジョンとなれば必ず現われる、そういう女だ。むしろ、現われねば私の妃ではない・・・そういう信頼関係こそが我らの愛の証。つまり、妃にさえこのダンジョンの噂を届ければ・・・』 「アルルー? 人間の女の子の名前なのー。人間ならなおさら来ないのー。羽もないしー、体力もないのー。あきらめるのー。じゃーサヨナラするのー」 『待てと言っとろーがぁっ!!』 「もももは儲けない商売には手を貸さないのー」 『ちっとは人の話を聞けぇぇぇ!』 「離すのー! 時間の無駄なのー、“時は金なり”なの―――!」 『せめてどうすればこの迷宮が売れるか、ヒントぐらい置いてけぇぇ――――――!』 「もももは商売教育サービスはやってないの―――! いい加減にしないとー、営業妨害で慰謝料を請求するのー!!」 『私はどーしてもこの新バージョンダンジョンを使ってアルルとデートしたいのだぁ! おまけにニセフラワーストーンで大出費だ! このままでは“フラワーストーンで幸運到来!?夢のランデヴーパラダイス!”どころか、ただの“借金地獄”になるではないか〜〜〜〜〜〜!!』 「だったら何か別の案を提案するのー! 人間ひとりだけ連れてきてもゼッタイ儲からないのー!」 『テーマパークを作ればいい・・・』 『・・・・・・テーマパーク???』 サタンは突然頭の中に響いた声を思わず反復した。思わずもももをひっ捕まえたまま辺りを見渡すが、部屋には相変わらずもももと自分しかいない。 「テーマパーク? さっきと違って面白そうなのー。どういう計画なのー? 詳しく教えて欲しいのー」 『は?』 私に聞いているのだろうか? この魔物は。細い目がえらく輝いている、ように見えた。 『このダンジョンをテーマパークの中心とするのだ・・・。周りには・・・そうだな、このオレが少し手を加えてやろう』 『へ?』 とたんに深い闇色だった足元のスクリーンが、白色の光を放った。いや、違う。スクリーンの向こう側の『ぷよぷよダンジョン』を含めた景色そのものが光を放ったのだ。 『!?!?』 光が薄れてゆくとそのスクリーンには、先程まで『ぷよぷよダンジョン』しかなかった岩石地帯に、色とりどりのアトラクションが映し出されていた。 その鮮やかさ、華やかさ、ワクワク感ときたら!! まず広さがハンパじゃない。先刻まで異様なまでに目立っていた「ぷよぷよダンジョン」を探すのが一苦労だ。赤茶けた大地はすでに微塵も見えない。いつの間にか現われた巨大な湖の中心に、巨木や巨大火山が軒並み揃う緑豊かな島がある。大都市ひとつ分の広さは充分ありそうだ。そして島内にそびえる山々、巨木群、巨大気球や人魚像・・・そのすべてがテーマパークのアトラクションであるらしい。 正面左に見えるのは、コースター系のアトラクションだろうか。伝説の幻獣“炎帝”が天空に向かって咆哮する像が山脈の中央に据えられ、それを取り囲むように炎を纏った巨大な竜が3体、燃え盛る大山脈を抱えるように象られている。轟々と凄まじい音を立てて焼岩ごとマグマを吹き出す火山群はまさに圧巻。名づけるとすれば間違いなく“ファイアーマウンテン”だろう。 ぷよぷよダンジョン奥に広がる空間は、“ウォーターパラダイス”とでも称そうか。美しく光の眩い噴水が、遠くまで広がる湖いっぱいに配置され、豊かな水のオブジェの空間を作り出していた。湖面、天空に限らずあらゆる空間に人魚像や神像がおかれ、湖に注ぐ滝が像を映し出す湖面を揺らしている。それはまるで水の楽園。入り口正面に架る輝く虹は、まさに天国への架け橋だった。 さらに左には光の乱舞。舞台は闇に包まれながら、色とりどりの光が明暗を繰り返しながら飛び交うことによって、その闇はさらに美しく深く淀む。光が闇と交じり合い、その惜しみない美しさをこれ以上ないくらい表現していた。ささやく音はまるで妖精の歌声。またたく光は星たちの演舞。まさに幻想空間。“スターライトステージ”。誰もがそんな言葉を連想するだろう。 アトラクションは見えうる限り以上の空間にも広がっているようだった。奥に広がるいっそう深い密林や、森に囲まれた怪しい巨大な闇の館・・・冒険者なら誰でも信じたくなるような、危険な魅力がそこにはある。 『・・・・・・・・!!』 サタンは突然現われたマンモステーマパークに、しばし口が閉じられなかった。 「すごいのー! これだけ規模の大きなテーマパークなら、話題だけで充分人が呼べるのー。あとはー、ももも鉄道をふもとまでひいてー、ももも急便緊急用を改良した飛空挺で繋げば問題ないのー。まってー、ふもとならもしかして廃道になった昔の召喚鉄道を引いてもらえるかもー。これならすごく経費が削減できるのー」 もももは勝手にピコピコと電卓を打ち付けて話を進めている。さっきまで、全く乗り気でなかったくせに。 「従業員はー、今もももの会社に登録してる社員を使ってくれるならー、派遣料3割引でお引き受けするのー。今、入場料をテーマパーク平均でざっと計算したところー、年間売り上げはこのくらいなのー。とってもお得なのー。お客さん、どうー?」 その瞬間、あの不思議な声がまた聞こえた。しかも、今度はさっきよりハッキリと聞こえる。 『それは助かるな、任せよう』 ・・・? 今、私の口まで動いたような・・・。 「毎度ありなのー。大もうけが期待できるのー」 何やら契約書まで取り出している。 「商談を進めるのー。こうなったら広報も、もももに任せるのー。テーマパークのテーマは何なのー? 売り文句はどんなカンジがご希望なのー?」 『あぁ、テーマは“わくわくぷよぷよ”だな・・・。売り文句は・・・何? “すっごい魔法のアイテム”だと?』 「“すっごい魔法のアイテム”ー? それは何なのー?」 『答えられない・・・ふーむ、それもまたミステリアスでよいな』 「ミステリーな“すっごい魔法のアイテム”を商品にするのー? お客さん、いい商売感覚してるのー。ミステリーはそれだけでお客を呼べるのー」 『いやいや、それほどでも。・・・って、何をしたヤツにそれをくれてやるのだ?』 「それは、もももの台詞なのー」 『・・・アトラクションを全てクリアした者に、アイテムを渡すと広報しろ。ふーむ・・・なるほど』 「なるほどー、たしかにアトラクションからは並じゃない魔力を感じるのー。歪んだ空間系のダンジョン形式になってるみたいだしー、フツーの魔物や冒険者じゃ抜け出せない力を感じるのー。面白くなりそうなのー」 『うむ、私もそう思うぞ!! なんて素晴らしいアイデアなんだ! これならアルルやカーバンクルちゃんもきっとやってくるに違いない!』 「商談成立なのー。早速本部に戻って企画を持ち上げるのー。3日後には従業員を届けるしー、すぐに準備にとりかかれるのー。緊急連絡には“ももも電々”を置いていくからー、何かあったら連絡するのー」 『おお、悪いな。・・・気をつけて帰ることだ。しっかり商売してくれよ』 いつの間にか、声とサタンの声は完全にユニゾンしていた。 「任せてー。1ヵ月後には大入り満員にして見せるのー」 リュックを背負って、ペタペタと魔物は非常口から去っていった。 サタンは満足げな笑みを浮かべて、ヨシ!と頷いたのである。 |
| ごあいさつ 思い込み突っ走り駄文を終えたところに、さらに続く駄文・・・ご挨拶でございます。どうも初めまして、naokiと申します。小説書くのは一体何年ぶりでしょう。かれこれ六年間、なにも書いてなかった・・・。 2004.11.26. naoki |