喚び声


 ウィリアムが出て行って、しばらく経ってのことだった。
 何度か部屋にシェゾしかいないことを確かめた後、その少年の気配は部屋の扉を少し開けた。
 扉と壁の隙間から、顔だけを出して彼は言った。
「ねぇ、街に出ない?」
「外出禁止だろ」 シェゾは、今朝セイジの言っていたことを忘れてはいなかった。
「・・・・・・」
 気配の主、セリアは今日もまた懲りずにフラフラと屋敷をウロついているらしい・・・
「また、抜け出してきたのか?」
「ううん、今日は父さんに頼んで出してもらったの。・・・庭までなら、好きに遊びなさいって」
 ――――― ウソだな。
と、シェゾは思った。
 昨日のあの騒ぎだ。アルベルがそう簡単に息子の外出を許すはずがない。アルベルは非常識な人間だが、具合の悪い息子の外出をそう簡単に許すほど、愚か者でもないと思う。
 それでも、顔色一つ変えず『親に許可をもらっている』と、12歳にしては上手いウソを口にする少年。ほんの少しだけそんなセリアに面白みを感じたシェゾは、少し騙されてやることにした。
「悪いが、今日は仕事を滞らせるわけにはいかん。ここでなら、少しくらい話に付き合ってやってもいいぞ」
「わかった」
 数日前に比べて、幾分力のない笑みを見せるセリア。病気に対しての不安が、少年をそうさているのかもしれない。

 相手をしなければ大人しく帰るかもしれない、と思って、しばらくシェゾはセリアを無視していた。
 まぁ、帰らないだろうとも思ってはいたが。
 シェゾに、マトモに相手をする気はないのだとわかると、セリアはアトリエの珍しい調度品をひとつひとつ眺めて回ることにしたらしい。セリアは特に、窓脇に置かれたままの青い花瓶が気に入ったようだ。光の恩恵を存分に浴びて、鮮やかな赤い花が咲いていた。リーマスあたりが、勝手に水を入れて庭の花を生けたのだろう。
「花がそんなに珍しいのか」
 自室に帰る気のないらしいセリアに、諦めも含めてシェゾは声をかけた。
 話しかけられるのを待っていたように、セリアはすぐに笑って答えた。
「ううん、花瓶が珍しいの。僕の部屋にはないんだよ。・・・すぐに割っちゃうしさ」
 悪戯っぽく笑うセリアの表情は、昨日の騒ぎをわざわざ彷彿させるかのようだ。シェゾは、少し面食らった。
「あ? ――――ああまぁ、そりゃ置けねぇな・・・」
「でしょ?」
「・・・・・・」
 わざと自分を追い詰めるように会話を持って行くやり方は、普通、少し気味が悪い。しかし、シェゾはそれとは別の理由で、セリアのやり方が気に喰わなかった。
 ―――――まるで、自分自身にわざわざ言い聞かせているようだ。『そんなモノを置いても無駄だ』、とでも。希望を捨てきれない、諦めの悪い自分を、まるで戒めるかのように―――――
 何か、いらぬ記憶が蘇ったような気がして、シェゾは思わずセリアを突き放すような言い方になっていた。
「・・・話すと気分が悪くなるんだろ。オレと話していて平気なのか」
「大丈夫。シェゾは平気だから」
 あっけらかんと言い放つセリアに、相変わらずシェゾの精神攻撃は効いていない。むしろ、身体に『氷の精霊』を宿す彼にとって、冷気攻撃など心地よいそよ風に等しいのか。
「・・・オレとは平気で、サザンはダメなのか」
 シェゾは努めてレイドのごとく、仕事の手を止めずに言った。
「人によるみたい。例えば、ホラ、デイビス店のアイギス。あの人としゃべってる時も、あまり痛みは感じないんだ」
 冷淡な口調で、感情を見せずに話すアイギス。たしかに、あの女魔族に人の“暖かみ”が在るとは思えない・・・って、それを言うと、自分にもそれが無いということになるのだが。―――――いや、それで「正解」なのだけども。
「だからオマエは、あの店によく出没するわけか」
「あはは、まぁね・・・。あの店は全然整理されてなくておもちゃ箱みたいだけど、居心地はいいよ」
 一旦、セリアは笑顔を見せたが、すぐに浮かぬ顔に戻った。
 今まで、多少は無理をして笑っていたのかもしれない―――――
「・・・でも、ここのみんなはダメ。遠くから見てる分にはなんとも無いんだけど、話しかけられたり、心配されたりすると、すっごく気分が悪くなるんだ・・・」
 セリアの声は、表情とともにさらに沈んだ。
「前は発作もね、そんなに酷くなかったんだけど・・・最近は、もう発作が怖くて、みんなに近づくのもイヤだ・・・」
「・・・・・・」
「部屋にいてもね、わかるんだよ。僕の部屋の前を通るたびに、エルダやセイジが心配そうにこっちを見てる。・・・父さんも。屋敷中の色んなところから、部屋の方に向かって嫌な声がたくさん聞こえてきて・・・うるさい。もっと心配させるから言わないけど、正直、あの部屋にいたくない」
 『うるさい』―――――聞き覚えのある、セリアらしからぬ言葉だった。それを聞いた時、シェゾは思わず仕事の手を止めてしまっていた。
 昨日、部屋の中で、幾度となくセリアが口にした言葉だ。『うるさい』『ウルサイ』――――まるで、聞きたくない「声」に怯え、それを拒むための唯一の呪文のように、セリアが何度もそれを叫んでいたことをシェゾはよく覚えていた。・・・重ねて見えたわけではないが、あの時のセリアの様子は、シェゾが過去に決別したはずの「誰か」の姿によく似ているように思ったからだ。加えて先刻の、自身をわざと追い詰めるようなセリアの言動――――
 寝不足気味の働かない頭は、普段、努めてあまり考えない様々ないらぬ記憶をも呼び覚ます―――――

 ぼんやりとした記憶の中の「誰か」もまた、セリアと同じように他者を拒むために様々な呪文を行使していた。時に言葉や態度にして、時に強大な暗黒魔法で、時に叶う筈のない願いとして。灰色の記憶は、「彼」が何のために必死になってそんなことを続けてきたのかまでは語らない。
 だが、今なら少し分かる気がしている。あまり認めたくはないが―――――たぶん、そういうことなのだろう。
 記憶の中の「彼」は、目の前の少年と持つべき運命こそはまるで違えど、やっていることはよく似ていた。

「父さんもみんなも・・・心配してくれてるのに、いつも酷いことばっかり言って・・・僕って最低だ―――――」
「そんなに怖がることないだろ」
と、シェゾは言った。干渉する気は無かったシェゾだが、この程度は言ってもいいと思ったのだった。
「怖がる・・・?」 セリアは意表を突かれたらしい。
「“みんなに近づくのが怖い”んだろ。だから、無理に近づかれると『ウルサイ』『近づくな』と暴れて拒む。――――尤も、それはお前の本当の気持ちじゃないんだろうが・・・」
「・・・? どうして、そんなことがわかるんだよ」
「似たような経験があるからな。尤も、オレの場合は・・・」
「・・・・・・?」
「まぁ、オレのことはどうでもいいことだな」
 シェゾは言葉を切って、今日初めてセリアを正面から見た。
「少し理屈で考えればわかることだ。屋敷の連中を怖がっているのは、お前じゃない。お前に憑いてる“氷の精霊”の方だ。お前が屋敷の連中を嫌うのは、お前がそうだからじゃない。いくらお前の中の“氷の精霊”がアイツらを拒もうと、お前自身は変わらずアイツらが好きなはずだろ。違うか?」
 セリアは、氷の精霊スノゥ・クウィーンを望んで受け入れたわけではない。それこそ「彼」とセリアの最大の違いだと、シェゾは思った。だからこそ、セリアは自分の心を忘れるべきでないのだと思う。あの日、全てを忘れるべきだった「彼」とは違うのだから。
 氷霊がどれほどの力を持とうとも、セリアがどんな強い「力」の持ち主でも、セリアは“魔”に属する者ではない。セリアはあらゆる意味で「人間」で、魔導師や魔女とは違うのだ―――――
「・・・・・・それは」 セリアは、戸惑ったような表情で、答えに困っていた。
「答えなくていい。答えようとすればするほど、“氷の精霊スノゥ・クウィーン”が嫉妬する」 シェゾはキッパリと言った。
「辛いのかもしれんがな、あまりアイツらのことを考えんことだ。自分のことだけを考えてろ、お前はそのくらい甘えてもいい。お前が誰にも会えないことで、誰が一番苦しんでいるかは、屋敷の連中は多分知ってる」
 シェゾがそう言ったことで、ようやくセリアはシェゾが言ったことを理解したらしい。
 屋敷のみんなに会えないのは、全部氷の精霊スノゥ・クウィーンのせい。『お前は何も悪くない』―――――そういうことだ。
「・・・ホント、迷惑な“精霊サン”だよ」
 セリアはそう言って、右腕のリボンを大切そうに撫でた。彼の腕にいつも巻きついている紅いリボンだ――――何かのまじないなのかもしれない。病気が治るよう何か願いでもかけているのだろう。たとえ気休め程度のまじないでも、「力」を持つこいつなら、それなりの「力」を発揮するのかもしれないな・・・。セリアの赤いリボンを眺めながら、シェゾはぼんやりと考えた。
 かなり強い「力」を持つセリア。「魔力」じゃないところが不思議なくらいだ。氷の精霊スノゥ・クウィーンだけでなく、この「力」さえもセリアは望んで手に入れたものではない―――――おそらく、こいつに憑いてる“氷の精霊スノゥ・クウィーン”とやらがこれだけの「力」を発揮できるのも、こいつの持つ元々の「力」に多少は影響されてのことなんだろう。

 なんという自由な「力」。変幻自在な力なだけに、変化した「力」は時として、その源を宿す器をも傷つけるのか。

(・・・・・・!)

 シェゾは、セリアの「力」に、自分の奥底に眠る「力」が再び反応したことを敏感に感じ取っていた。

 

■      ■      ■

 

 ―――――またか。
 ―――――しばらく、大人しくしてやがったと思ったら。

 シェゾはその時、自分の眠れる力が反応したのは、いつものように彼を主として認める「暗黒の相棒」の意思が働いたからだと判断した。『闇の剣』と呼ばれる古代の暗黒召喚器。「彼」が、セリアの「力」を前に再び覚醒したためだと思ったのである。
 セリアのような眠った力ではないだけに強大で、古代器としての意思プライドを持つだけにタチが悪い、それでもある意味無垢な暗黒の力。「彼」とは長い付き合いなだけに、「彼」の考えは大体の予想がつくのだ。
「シェゾ?」
 急に黙ったシェゾに、セリアが怪訝な顔をした。しかし、今しばしはセリアこいつの相手をしている場合じゃない。
 眠い上に暑い時に、気を抜きたくない少年ガキを前にして、制御に多大な気力を割かねばならない“暗黒の意思”の相手など、正直なところしたくない。それでもシェゾは古代器の“あるじ”として、「意思」の制御に努めなければならなかった。なぜならその『喚び声』は、確かにシェゾに勧めたからだ―――――― “ 彼 の  力 を  奪 え ” と。
 それが、自分の望む形でない限り、シェゾはその「意思」に従うわけにはいかなかった。
「・・・黙ってろ」
 まとわり憑くような暑さにイライラしつつ、シェゾは「剣」にそう言ったつもりだった。
 ところが、シェゾの予想に反して、「剣」は奇妙な反応を示した。

 ―――――― ・・・? 喚んだか、主よ。

(・・・は?)
 シェゾは、「剣」の予想外な方向からの反応に、一瞬混乱した。
 違う、「剣」の声じゃない。さっきの『喚び声』―――――
(お前じゃないのか?)
 ―――――― ? 何の話だ、主よ。
(さっき、“セリアの力を奪え”とオレに干渉してきたのは―――――)
 混乱はしたが、元々キレ者のシェゾはその短い「剣」の反応だけで、『喚び声』の主が「剣」で無かったことを理解しつつあった。しかし、だとすれば様々な疑問が無秩序に沸く。
 「剣」でない? なら、どこから、何のために、どういう術で―――――・・・誰が?
 混乱に追い討ちをかけるように、「剣」が意識下でわめいた。

 ―――――― ・・・確かに我は、少年の「力」を主が欲しないことには不満がある。しかし、主は予ねて我に言ったはずだ。『主自身のことは主自身が決める』と。『我が口を出すべきことではない』、と。その折から我は主の意思に反する行為を決してしない

「ぅぐ・・・っ!」
 「剣」も在らぬ疑いをかけられ、イライラしていたに違いない。感情をストレートに伝達してきやがった。正直、シェゾは剣のこのような意識のぶつけられ方が一番苦手だ。年寄り臭い言い方をするくせに、思考回路はまるでガキ(シェゾもヒトのこと言えない)。怒らせると厄介なのだ(つまり似たモノ同士)、それは解っていたのだが・・・
 後頭部に強い衝撃を喰らった後のように、シェゾのノーミソはグワングワンと回転した。当然、『喚び声』が一体何だったのかなど、とうにシェゾの中でどーでもよくなっている。とりあえず、この最悪な気分を誰かに何とかして欲しかった。

「・・・大丈夫ですか」

 またもさらに予想外な声に、シェゾはさらに疲れた。振り返るまでもない。ビードロを叩いたような澄んだ声。聞き慣れたような、聞き慣れないような、つまるところ中途半端な音色の声の主は、混濁したノーミソの中でもよく思い出せた。
「あれ、レイド。帰ってたの」 セリアだ。
「ええ。ついさっきに、ね」
 レイドはシェゾのすぐ目と鼻の先で、シェゾの影を踏んでいた―――――彼の眼鏡は陽を反射してその奥は全く見えなかったが、その瞳はいつものように冷たく光っていたのだろう。
 ―――――何で、コイツがここにいるんだ・・・?
 ―――――・・・というか、いつの間に現れた?
 ―――――コイツが現れたことに、オレは全く気づかなかったと言うのか――――
「シェゾ、大丈夫?」 セリアが心配そうにシェゾの俯いた顔を覗きこむ。
 それが合図だったかのように、シェゾはふと全身の感覚が自分へ戻ってきたように感じた。
 どっと疲れが溜まっていたことに気づく。全身汗だくだったことにも、今更気づいた。暑さでボケすぎていたらしい。
「シェゾ、さん?」
 レイドのさっきより幾分怪訝な声に、シェゾは再び思考を戻した。あくまで義務的にハンカチを差し出すところも、レイドらしい。そう思ったところで、やっと視界に周りの景色が飛び込んできた。
 寝不足の自分、窓からのむし暑い夏の日差し、熱を容赦なく吸い込む自分の黒服、自分と住む世界が違う少年、加えて得体の知れない妙なメガネ男が目の前に――――――
 そこまで考えて、シェゾは今この場に、自分の精神がおかしくなる条件が揃い過ぎていたことを悟った。
 ようやく、剣の機嫌も一応治まったらしい。「彼」は再びシェゾの意識の奥へ溶け込んでいった。闇の剣には、あとでしっかり謝っておいた方が良さそうだ・・・
「・・・なんでもねぇよ」
 シェゾは、意味もわからず額を押さえつけていた右手を下げた。レイドはそれを、『ハンカチはいらない』という仕草ととらえたらしい。涼しい顔のまま、ハンカチを懐に戻していた。レイドはシェゾと違って額に汗ひとつかいていない。

 暑さのせいだ―――――シェゾはそう思うことにした。
 重い足を引きずりながら、日差しを避けて部屋の奥に移動する。

 その様子を不思議そうに眺めるセリアと違って、レイドは元々シェゾを相手にする気はなかったらしい。彼の興味はさっさとセリアに向いた。
「セリアさん、部屋にいなくていいんですか」
 行動を咎めるでもなく、助長するでもない。レイドの言葉には、相変わらず真意が見えない。
「・・・ええと」
「また、抜け出したというところですか」
 セリアが何か言う前に、レイドは涼しい顔をして言い終わっていた。
「ま、私は貴方のそんなところが好きですけどね」
「・・・。・・・ホントかな」
 セリアは困ったように、少し冷めた言い方をした。
 その直後、セリアはパッと表情を変えて急にうずくまってしまった。
「・・・? どうした、気分が悪いのか」
 自分の体調の悪さをしばし忘れて、シェゾは言った。
「まさか、発作?」 レイドだ。
 セリアはうずくまったまま、すぐに首を横に振る。
「ううん、違う。でも、時々こうなる・・・げほッ」
 セリアは否定したが、毒を吐き出すような咳を立て続けに吐いた。
「私の告白に、“氷霊”が嫉妬したとか・・・?」
「アホ」
「違うって・・・。そんなんじゃない、わかる」
 セリアはキッパリと言ったが、その後の声は一切言葉にならなかった。
「う、げほ・・・げほっ ・・・っ」
 咳き込みが一層激しくなり、熱も出てきたらしい。
 気を失いかけたセリアを前に、シェゾは自分でも気づかぬ内に焦っていた。
「おい、まずいぞ」
「・・・・・・」 ふと見ると、傍らのレイドはまるであさっての方向を向いている。
「何をしてる?」
 レイドは、さっき涼しい表情と打って変わって、少し緊迫したような表情で言った。
「そこの花、枯れてましたっけ?」
「・・・?」
 レイドの視線の先。部屋の隅の青い花瓶。先刻、セリアがその鮮やかな赤い花に触れて、「羨ましい」と口にした。
 驚いたことにその花が、今、闇の瘴気にでも触れたように、力なく枯れ落ちていた。
 ―――――? いつの間に?
 ―――――さっき、自分「剣」と話した影響か――――?
 しかし、深く考える気もあまりない。シェゾは、直後に花の存在は無視した。
「知らん。とにかくコイツを部屋まで連れてくぞ」
「そうですね」
 レイドとともに、シェゾはセリアを抱えて、早々に部屋を後にした。

 運良く(運悪く?)、部屋を出たすぐ先の廊下でエルダに見つかり、セリアは慌てて自室へ連れ戻された。後のことはエルダと、すぐに駆けつけてきたマリアとアルベルに任せて、シェゾとレイドは部屋の前の廊下で悠長に突っ立っていた。後で、アルベルから直々に話があるという。勝手に仕事に戻るわけにもいかない。
 部屋の中からは、セリアの酷い風邪に侵された時のような咳が、ずいぶん長く続いていた。同時に、部屋を無断で抜け出したことを叱られているようだ。マリアの厳しく諭すような口調とともに、色んな言い訳が聞こえてくる・・・
「・・・アイツ、えらく調子悪そうだな」
「そうですね、ここ数日は特に不安定みたいで。数日前までは街まで一人で遊びに行ってたらしいですよ。でも、最近はずっと外出禁止だそうで。・・・夜はいくらかマシになるようですが」
と、レイドは言った。
「夜はマシになるのか?」
「ええ、彼自身がそう言ってましたよ」
 そう言えば、昨晩アイツと会った時も、昼間からは想像できないくらい元気だったな。
「・・・妙な病だな、夜に調子が良くなるなんて。大抵の病気は光の恩恵の多い昼間に安定するモンだろ」
「そうなんですか? 僕は医術には詳しくないので良くわかりませんが・・・」
「・・・・・・・・・」
 喰えない男だ、とシェゾは改めて思った。

 

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