◇ウォーターエレメントとファイヤーエレメント
「夏ねェ」
サンゴ礁を思わせる、美しいアクアマリーンの髪を背までたらした妖艶な美女が呟いた。視線だけで遠くでにぎわっている海岸を見つめる。中にはアロハシャツなぞを着てウクレレ持って踊っている魔王なる者や、アンデットのクセにヘーキで日光浴しているガイコツなんかも目に入るが、やはり目立つのは夏の海の華といえる、水着姿の女性軍だった。
「うふふ、やっぱり海で男を悩殺するにはハヤリの水着じゃないとね★」
んふっ、と妖艶に笑うと彼女のチャームポイントとも言えそうな左の泣きぼくろが、いっそう魅力的に感じる。
ここは波打ち際のちょっとした岩陰。なぜかそんなところでバニーガール姿のおねーさんが、コンパクト片手に口紅を塗っているのである。ウォーターエレメントだ。
「ちょっと、火のボンボン!さっきからそこにいるのはわかってるのよ、さっさと持ってきなさい」
おねーさんの声にびくりと反応したのは・・・波が打ち寄せる岩から少しでも逃れようとしているように見える・・・・・・どう見ても『火』・・・。が、それはどこかおそるおそる人の形を形成し始め、ちゃんちゃらおかしいどっかのパンクヤローみたいな姿になった。しかしそいつはどうも岩先のおねーさんのところには近寄れないでいるらしい。波に怯えながら言葉を返す。
「ひ、火のボンボン・・・ってなんなんスか。オレには一応ファイヤーエレメントっつー精霊名が・・・・・・」
「そんな長い名前いちいち言ってられないでしょ。それよりあった?私に似合いそうな美しいみ・ず・ぎ★」
「あ、あったけどよ(似合うかどうかは別にして)・・・・・・これアンタとこに持ってくのはムリだぜ?タダでさえ今日は風が強くて波が・・・あわわっ!」
「情けないわねぇ、アンタそれでも上位精霊?この程度の水霊に太刀打ちできなくてどーするのよ」
「バカヤロー!この辺の水霊は今アンタの精霊力でとんでもねぇ力持ってんだぜ!?いくらオレでも骨が折れらぁっ!!」
わめくパンクヤローに、ウォーターエレメントはやれやれ、とため息をついてコンパクトを閉じた。それで「まったく・・・上位精霊が聞いてあきれるわ」と、ちゃぷんと一瞬にしてファイヤーエレメントのそばまで流れて現れた。
「で、どんな水着?色は?露出度は?肩口は開いてなきゃだめよん★」
「自分で確かめてみればいいだろ・・・ほれ」
やはり直接手渡すには双方ともに抵抗があるらしい。至近距離ながらファイヤーエレメントは手に持っていたもももショップの紙袋を、彼女に投げてよこすのだった。
20秒後。
「・・・・・・・・・何よ、これは」
「なんだ?気に入らんのか、今はやりなんだぜェ!ブルセラ」
「あたしは水着を買ってこいって・・・・・・っ!」
「だから流行りなんだってばよ、セパレーツが今年の流行・・・」
・・・・・・百歩ゆずってハヤリだったとして、だ。このセパレーツと水着のセパレーツじゃあまりに違う気やしないか?とまぁこんなところで百歩もゆずる必要もあるまいサ。
「アンタの流行りなんか、流行りのうちに入らないのよ!!この流行おくれの田舎バカ!」
「なんだとぉ!?そんなにゆーなら自分で行ってくりゃいーだろーがぁっ!」
「バカ言わないでっ!あんな焼け焦げた砂浜なんかに5秒も立ってられないわよ!!しかもたまに火がついたままのタバコなんかが落ちてるし・・・・・・キ――――――ッッ!!」
「っだ――――――っ!アンタのほうがよっぽど情けないぜ・・・って、オイ!むなぐらつかむな、やけどするぜっ!!」
「っるさ―――――――いっ!!」
「ぎゃー!やめろぉ、火が消えるっっ!」
津波がよく起こる季節ですね。
ヒトリゴト ・・・・・・砂浜は・・・精霊が歩けるようにキレイにね・・・。