◇思いがけないウェディング

 

 南の島の無人島。サタンの誘いで、たくさんのモンスター、魔導・ぷよのキャラクターたちがビーチ・沖合いで遊んでいる。

 いつもはチャイナドレスのドラコが赤い水着で身を包む。いつもは長い金髪を腰まで下ろして魔女さながらの黒いローブ姿のウィッチが、ポニーテールに髪をまとめて可愛い水着にT−シャツを羽織ってかき氷を食べていた。いつもは金の鎧で厳かな態度を崩さないラグナスが、アロハシャツとサーフボード片手にグラサンスタイル。いつもは見苦しいセーラー服に身を包んだちょっぷんが、海パン一丁でしつこくラグナスに波乗り勝負を申し込んでいた。

 雲ひとつ無い空と、蒼く美しい珊瑚礁に囲まれたこの島は、まるで別世界のようだった。

 

「んん!? 我が妃は一体何処に行ってしまったんだ? おのれ、ヘンタイ魔導師の姿も無いではないか!」

 ビーチバレー大会の真っ最中だというのに、何をカン違いしたか唐突にサタンが叫んだ。

「アルルなら、さっきあの木陰の泉で水浴びするって・・・ホラ、茂みの上にちょっとだけ髪飾りが覗いてる」

 茂みを指差し、傍らのラグナスが答えた。まわりの声がうるさいので、二人は少々声を張り上げ気味だ。

「なんだ、あんなところに・・・ぬぅ?!」

 サタンの10.00の視力が茂みの中に別の色を捕えた。

「アルルの髪のすぐ隣に見えるのは、銀髪!? ヘンタイ魔導師めッ 我が妃に何をしておるんだ?! アルルよ、今私が助けに・・・って、ぐわぁッ!?」

 サタンの頭にスイカ模様の鉛球がごわーん、と当たった。その勢いでサタンは前のめりに倒れ、ぐしゃっと砂浜に突っ伏した。

「やりましたわ! このルルーが『鉛球ビーチバレー』で見事にサタンさまに勝利しましたわ!!」

 嬉々とした声が崩れた豆腐となったサタンのノーみそに聞こえてきた。

 ちかちかと白い光がフラッシュする視界いっぱいに、珊瑚礁のような流れる髪と誰もが認める美女のカオがずいっと現われる。

「サタンさま!約束どおり、このルルーを貴方の妃にしてくださいませッ! きゃー!言っちゃったぁ!! もぅ、ルルーのエッチぃ!!」

「ま、待て、ルルー!今のは「アクシデント」だ。見ろ、この頭の「血痕」を・・・」

「まぁ! サタン様ってばこのルルーを「愛してる」だなんて! それに、今すぐ「結婚」して下さるなんて! ルルー、感激ですわ!!」

「そ、そんな、ゴーイングマイウェイな解釈!? 待ってルルーさん!」

「まぁ、私のためにゴールデン・愛・ウェディングドレスを用意してくださるんですか!?」

「ええええええ!?」

「嬉しい・・・サタン様と結婚・・・ああ、この瞬間を何度夢見たことか・・・! さぁ、こうしてはいられませんわ! さっそく屋敷に戻ってじいと執事たちに2人で挨拶してこなければ! ドレスの注文、式場の確保・・・招待状は約10000人分用意しなければ・・・さぁ、サタンさま!今、じいを通して呼んだ自家用飛空挺が来ましたわ!! さっそく、婚前旅行をかねた大陸縦断をいたしましょう!!」

 ゴゴゴゴゴゴ・・・

 すでに上空には中央大陸最大の王国セントルイス王が、持っているかいないかの馬鹿でかい飛行物体が到着していた。砂を巻き上げながらビーチに着陸する。(たぶん『鉛球ビーチバレー』が始まる前にすでに用意されてたと思われる)

「ルルー様・・・お幸せに・・・」 ミノタウロスが白いハンカチを目に当てて泣いている。

 夜にも珍しい飛空挺の登場に、いつの間にかギャラリーが集まってきていた。

「うううッ、サタン様が認めた相手なら仕方ないケドッ!でもね!ルルー、アタシは一生アンタのライバルだよ!?」 ドラコも涙目だ。

「サタンさまも〜お幸せに〜ラララ〜♪」 ハーピーは祝福の歌(?)を歌っている。騒音だったが。

「お姉ちゃんたち、ケッコンするの?」 あーちゃんは興味津々だ。気になる男の子でもいるのかな?

「我らが王・・・太陽の下での決断とはいえ、祝福せねばなるまい・・・」

 日中滅多に姿を現さないヴァンパイアの一族までが、黒いローブ姿で現われる始末。黒いバラの花束まで抱えている。背後にはデーモンサーバントの一団をも従えていた(暗ッ)。

「・・・そ、そういうことになったんだな。じゃあ、2人とも幸せに」

 ラグナスは周囲の状況に飲まれてありきたりなことを言った(いくら光の勇者とはいえ、問答無用で闇の一族を斬り裁いたりはしなかった。ラグナス、エライぞ!)。

「・・・・・・・・・」 サタンは固まっている。ええ、そりゃもう石のように。

「お嬢様・・・ついに、目的を達成したようでございますな」 飛空挺から速やかに降りてきたのはじいだ。

「ありがとう、みんな! 私はこれからサタン様のお嫁さんとして、一生幸せに暮らすわ!」

 すでに大観衆となりつつある砂浜の様々なキャラクターに向かって、ルルーは宣言した。観衆がわっと歓声を上げた。

 なぜか、花束をその大観衆に投げ入れる。未婚の少女・・・ドラコ・ウィッチ・セリリ・ハーピー・チコ・サキュバスまでも(ええ”!?)がその花束を取り合った。最終的に取ったのは・・・インキュバスだった(ええええ!?)。

 その間に、じいはサタンに歩み寄る。

「サタン殿・・・私はルルーお嬢様の育て親でございますぞ。この老いぼれに誓ってくだされ、お嬢様を一生愛すると」

「・・・・・・・・・」 サタンは答えない。固まったまんまだ。わ、私が・・・私が愛しているのは・・・カー、いやアル

「サタン殿?」

 じいの声に、一瞬砂浜が静かになり、皆がサタンの言葉を待つ。風の音が妙に大きくなった。皆の期待が頂点に達しようとしていた。

 その時だ。ルルーの足元を黄色い生物が横切った。

「あら、カーバンクル・・・全く、あの子はこの子までほったらかして何してるのかしら」

 ひょいと、その生物を拾い上げた瞬間だった。

 キュピィン サタンの思考回路の約99.99%が崩壊した。

「うおおおおおおおお! 愛してるぞぉぉぉ――――――っ!!」

 ガバッとルルーを(と、周りの者は思った)サタンは力任せに抱きしめた。格闘家のルルーでよかった。一般人なら骨と内臓がスプラッタだっただろう。勢い余って、飛空挺の昇降口の中にガコーンと追突。ルルーはばたんきゅ〜になったが、柱に頭を打ち付けたからか、はやまたサタンの抱擁に熱が上がったからかは永遠に謎だ。

「うおおおおおおおおおおお!!」

 砂浜で大歓声が上がった。座布団が舞う(?)。

 もはやお祭り騒ぎである。

 立ち並ぶ商人系モンスターが経営する海の家は、すばやく結婚饅頭、ウェディングケーキ、焼きソバ、ウェディングカレーなどを売り出した。

 ウォーターエレメントは気を利かせて海辺を水のオブジェで飾り出した(少々卑猥だが;)。

 アースエレメントは不器用な力で砂浜に巨大な砂の城を作った(ただの山にも見えたが)。

 パノッティはわけのわからん曲を吹き、すけとうだらはそれに合わせて踊りだす。

 トリオ・ザ・バンシーは恐ろしい声で祝福の叫びを繰り返していた。

「お嬢様、サタン殿・・・じいは満足ですぞ」 ほろりとハンカチで涙をぬぐい、飛空挺の扉を閉じるよう合図した。

 ゴゴゴゴゴゴ・・・

 飛空挺が再び空へと舞い戻る。

 さめざめと泣くのはミノタウロスのみで、あとのモンスターや美少女キャラクターは何処からともなく流れる太鼓の音にあわせてファイアーダンスを踊るのみ。砂浜の騒ぎは主役がいなくなった後も、夜まで続いた。

 

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ヒトリゴト ・・・・・・シェゾとアルルがいねぇ。何をしていたかは、妄想サイトに姉妹編がある・・・ハズ(?)。