.* Magician *.
シュッ ボゥ・・・
「あつっ・・・!」
その少女―――マリィが手を引っ込めた瞬間だった。
フッ
さっき燈したばかりのろうそくの炎がかききえる。慌てて手をかざしたが、すでに火は風にさらわれたらしく、再び炎が戻ることはなかった。
あーあ、
「・・・最後の一本だったのに・・・・・・」
マリィの足元には、すでに炎の魔導が宿っていたであろう小型の魔導芯が落ちていた。いずれも魔力を失っている。
マリィはその中に、持っていた最後の魔導芯を静かに落として呟いた。――――――しかたないや。
「今日は明かりなしで描こう」
月明かりだけでも、この草原はまぁ明るい。
MAGICIAN
『ワン、ツー・・・・・・』
背の高い男の持つシルクハットが宙に舞った。
『スリー!』
パァァァ・・・・・・ッ ポーン!!
バササ・・・!
『おおお――――!』
マスクをつけた男の周りに、歓声が沸き起こった。満月の夜の『ラストマジック』。シルクハットの中から現れた白いハトたちは優雅に夜空へ舞い上がった。
ハトたちは、しばらくのあいだ闇の中を自由に舞っていたが――――――見納めの頃、男はそれらを慣れた手つきで呼び戻し、再びハットをかぶった。歓声はまだやまない。
『ありがとう、今夜もまた楽しかったよ』
客に向かってその背の高い男は不思議な響きのある声で言った。
街角で毎夜行われる、この小さなマジックショー。最近はこの街でちょっとした名物になっていた。
なんでもこの主催者らしきマスクマジシャン、出生については誰も知らない。ただ、誰の目にも男のマジックの腕がプロ並だというコトがわかる。だから誰もがこの男に持っているある疑問があった。ショーが幕を閉じ、客が帰り始めた頃、傍観していた1人の若い男がこのマジシャンの背後に歩み寄る。
「・・・にぃちゃん、ひとつ聞いてもいいかい?」
『――――――何かな?』
商売道具を片付けながら、男はマスクも取らずに答えを返す。若い男は「みんなが噂してるんだけどな」と前置きした上で言った。
「・・・・・・アンタ、どっかのお偉い魔導士様なんじゃないのかい?」
マスクマジシャンは少し間を置いて、
『なぜそう思うのかな?』
と、若い男を振り返った。マスクで表情は定かでないが、穏やかな雰囲気だと若い男は思った。
「なぜって・・・・・・アンタのやってるマジックは、本当に魔法みたいだからさ」
男は正直に言う。「だけど本当にそうだとしたら、なんでこんなところで手品師みたいなコトやってんだろ、って思って」
そんな若い男の言葉に、マジシャンはふっとマスクの下で笑った。やはり穏やかな笑み。
『・・・私はいち奇術師でしかないよ』
『魔導師なんてとんでもない』と言った。
『ただ魔法で人を幸せにできるのなら、魔導師であっても良いとは思うがね』
若い男にはそのマジシャンの言葉が理解できなかった。できぬうちにマジシャンは夜の街の奥へ消えてゆく。
その後ろ姿は妙に魔的だった――――――。
――――――その夜以来、このマジシャンはしばらく街に姿を現さなくなる。
MAGICIAN
『何を描いているのかな、お嬢さん』
「え?」
声に驚いて振り返った。ここは土と草以外は周りに何もないところ。人が近づけば必ず気づくハズなのに。
『ずいぶん熱心に描いているんだね、今まで私に気がつかないなんて』
その人がやさしく笑った感じがした。明かりが無いから、見下ろす人の姿がよく見えない。背が高いから男の人だと思うけど・・・。どこか暖かい雰囲気のある人。
ふっと音も無く、いつの間にかその人が自分の隣に座っていた。・・・あれ?
目が慣れてきたのか夜の繰り出す魔法のためか、その時男の髪が風に揺られて、覗き込んだと同時に顔が見える。――――――あ、
「・・・・・・マジックショーのおにーさん!」
マリィは時々母親に連れられて、街で見るマジックショーを思い出した。中空から飛び出す白い鳥や、赤いバラ。割れたと思えばいつの間にか元に戻って浮かんでいるたくさんの風船たち。それらを操る2本の魔法の手をもつ、背の高い男の人。
そう、その特徴的な金色のマスク。いつもは頭にかぶさるシルクハットと長い杖、それらを操り繰り出す魔法がいつも楽しい。
『知っていてくれたのかい、うれしいものだな、これは』
金マスクの下で、そのマジシャンは照れ気味に笑っていた。そしてマリィの手元を見てちょっと呟くように言った。
『・・・・・・これは・・・、『月』かな?』
マリィの持つ、スケッチブックを見ながらの言葉だった。白いキャンバスいっぱいに、黄色い円が描かれていた。幼い女の子が力いっぱい描いている、そんな何か訴えるような『画』であった。
「そう、『お月さま』だよ」
自分の描いている絵を満足げに眺めて、マリィは「おばあちゃんに見せてあげるんだ」と、ただ純粋に嬉しそうに笑っていた。
MAGICIAN
月夜を背に、マリィは―――おそらくはマジシャンに向かって話していた。子どもながらに優しい表情で、ただ純粋に。すでに高く上った月を見上げて。
「マリィのおばーちゃんはねぇ、ごびょーきでお外に出ちゃいけないんだって。マリィもお昼間はおばーちゃんの側にいてあげるんだけどね」
マジシャンはただ黙ってこの幼い少女の話を聞いていた。優しい笑みを浮かべながら。
「おばーちゃん・・・夜になるといつもちょっと寂しそうに窓の方を向いてお外ばかり見るんだよ。マリィは昨日、どーしてそんなに寂しそうにお外を見つめているの?って聞いたの」
『へぇ・・・・・・おばあちゃんは、なんと答えたのかな?』
マジシャンは先ほどまでの優しいまでの笑みをふと和らげて、少し疑問に思ったようだ。
「うん・・・『お月様が・・・見えないね』って言った」
『・・・・・・月?』
腰を下ろしていても、マリィとほぼ並ぶ高さにある顔を少し傾けてマジシャンはマリィの表情をうかがった。
『・・・窓からは見えないのかい?』
マジシャンは、その言葉の裏で・・・・・・この少女には想像することもできないだろうことを、思考していた。ただその瞬間だけ。
――――――見えなければ、『見えるようにする』のみ。
「うん、マリィのお家からは見えないの。お隣に大きな教会が建ってるから」
少女のちょっと悲しそうな笑みを見て、マジシャンは自分になら・・・この少女とその祖母に『幸せを与えること』かできるかもしれないと思った。
――――――しかし、「だからね、マリィが描いてあげるんだ」
『・・・・・・・・・キミが・・・?』
マリィの、ただ純粋な笑顔がそこにあった。マジシャンを見つめる視線の先には、おそらくこの少女の大切に想う祖母がいるのだろう。
「マリィはいつでも出かけて、お月さまを見れるから。おばあちゃんにマリィの見たお月さまを、そのまま見せてあげるんだ」
『キミが・・・・・・』
なんということだろう。こんな小さな少女でさえ、美しい魔法が扱える。しかもそれは、自分の扱う魔法よりも――――――数倍数段美しい、と来るなんて。
マジシャンはまたゆっくりと穏やかな笑顔に戻っていった。マリィの手元を見て、再び優しくマリィに言った。
『じゃあ、早く描いて持っていってあげなければいけないね』
「うん、でも暗いからもうちょっと時間がかかるかもしれないケド」
そう言いながらも、マリィの表情は明るかった。きっと祖母の喜ぶ顔を思い浮かべているのだろう。マジシャンはそんなマリィの表情に何か敵わないものを感じて、ふと思いついたように片腕を前方に軽く伸ばした。
『じゃあ・・・・・・』
マジシャンはもう片方の手をふぅっと風に乗せるように振り、『これでどうかな?』とマリィに問い掛けたようだった。
フゥ・・・ッ ボゥ・・・!
マジシャンの静かな呟きに呼応するかのように、彼の手のひらの上に小さな炎が現れていた。赤い炎は小さいながらもちらちらと揺れ、それでもマリィの顔を明るく照らすほどに強い光を放ちつづけていた。
「わぁ・・・!明るーい・・・」
マリィは突然の炎の出現に驚きながらも、感動の眼差しでそれを見つめた。自分の持ってきた魔導芯よりもはるかに明るいこの炎。そんな炎を魔導器無しでいともアッサリと操ってしまったこの人は・・・・・・この人ってもしかして。
「すごい・・・・・・まるで魔法みたい・・・。おにーさん、本物の魔法使いみたいだね!」
いつかの夜にどこかの若者に言われたような気もする。その時は奇術師だと『偽った』。マジシャンはふわりと炎を中に浮かせる。そのまままるで操り糸でもついているかのように、マリィのもつキャンバスの前に携えた――――――ように見えた。
――――――その『マジシャン』は言った。闇の中で美しい髪を靡かせながら、不思議な響きのある声で。
『そう、私は魔法使い』
マリィは突然不思議な雰囲気を持ったこの男を――――――何かに魅きつけられたかのように、立ち上がった彼を見つめていた。
『いつもはそれを偽って、『奇術師』として人の前に立つことはあるけれど――――――』
そこで彼は一旦言葉を切り、少しかがんでぼぉっと彼を見上げるマリィの小さな頭を撫でながら・・・・・・やはり優しく笑って言った。
『でもね、時々キミのような優しい心を持った子がいると・・・・・・手を貸してあげたくなるんだよ・・・』
しかし彼は気づきかけているのかもしれない。この『優しい心』に『魔法』は必要ないことに・・・。
「ふーん・・・?」
まだ何かよくわからない顔をしている少女に対して、彼はマスクの下でもう一度笑う。それは今までマリィが見た中で、一番穏やかで優しい笑みだった。
『おばあちゃん、喜んでくれるといいね』
『マジシャン』がそう言った時だった。
「あっ」
突如吹いた悪戯な風によって、マリィは一瞬視界を奪われた。風のおさまりとともに髪をかきあげ、もう一度彼を見上げたときには、もう・・・・・・
「え・・・・・・」
立ち上がって周りを見渡す。風が少しひんやりとしているのが肌に感じられるだけで、他は何もなかった。土を草の匂いが風に煽られるのみで、彼の気配は何処にもない・・・。
姿の消える少し前、あのマジシャンはこう言った。
――――――『そう、私は魔法使い』―――――――――
マリィは足元に浮かんでいるやや明るい炎をちらりと見て、もう一度彼が去ったと思われる方を向いて呟いた。
「ありがとう、魔法使いのおにーさん・・・」
MAGICIAN
風と共に高く舞い上がった自分の体を宙空に止め、彼はその小さな少女を静かに見下ろしていた。
小さな少女はもうすでに自分の作り出した炎の元で、大切な祖母への美しい贈り物を描き始めていた。小さな努力をするそんな少女の姿を見て、彼は自分の力のあまりにもバカバカしい無意味さを思い知らされるのだった。
『小さな少女に、幸あれ・・・・・・』
なにげにいつ流行ったのかも定かでない言葉を残して、彼は再びその場から姿を消した。なにげに満足そうな笑みを浮かべた表情は、あの少女と似てなくもなかった。
――――――自分には、体の弱った老女に『本物の月』も見せることはおろか、病気を完全に治すことも可能だろう。
己の持つ魔法の力をもってすれば、容易くどんな願いでも聞き取ることができるのだろう。――――――しかし、自分はこの少女が見せたような『幸せを与える』魔法に関しては、全くの未熟者ではないだろうか?
彼女たちのこの『美しい魔法』の前には自分の『偉大なる魔力』は明かり一つとして働くに過ぎないのだ・・・・・・。
MAGICIAN
一連の話を聞き終えて、シェゾがやれやれという表情をして言ったヒトコト。
「ロリコン・・・・・・」
バシィ!!
すかざずサタンがシェゾに張り手をかますが、シェゾは腐っても(一応)美形キャラ。そー簡単に顔を傷つけるワケにはいかない。すばやく両手をクロスして、その音速攻撃に耐えていた。その傍ら(?)でサタンがほえる。
『私は断じてロリコンではない!!』
「へいへい」
なかなかの迫力を伴った魔界の帝王の断言に、闇の魔導師シェゾは気のない風に答えを返していた。
シェゾはすでに勢いの衰えたサタンの腕を自力で解いて作業に戻る。ちゃっかりメガネなんかかけて、サタンに預けていた自作の薬を調べている。サタンの話を聞きつつなので、あまり進んではいないようだが。「しっかし分からんもんだな・・・。いくらアンタが超ド級の魔力無駄使い魔だっつーても、そこまで無駄に終わらせるか?ふつー」
呟きではあるが、明らかに傍らのベットに横たわっているサタンに向けられたものであった。
『・・・・・・私はあの少女がその時一番望んでいたことを、実行に移してやったまでだ』
サタンはぶっきらぼうに答えた。その顔は窓の方を向いていて、外を眺めている様子。といっても、ここはこの世でお空に一番近い塔のてっぺん、高すぎて何が見えるワケでもないんだが。
「・・・だからってなにも明かり一つで満足せんでも・・・、アンタほどのヤツなら月を丸ごとそいつんちに持っていくコトぐらい容易くできただろうに」
シェゾがビンの中の液体を調べながら、そんなコトを愚痴っている気配が背中に感じられる。・・・・・・サタンは思った。
確かにヤツのいうコトも一理ある。私があの時自慢の強大な魔力でもって、彼女の家を突き止め、病気だという祖母を一瞬のうちに元気にしなおし、その足で草原へテレポートさせていても――――――あのマリィという少女は、何の気兼ねなくただ純粋に笑っていてくれたかもしれない。
あるいはシェゾの言うとおり、月の軌道をちょっといじって彼女の家から直接月を見れる位置に月の方を移動させるか・・・いや、それくらいなら彼女の家の方を草原に移動させた方がラクか?
――――――しかし・・・・・・。
『それでは・・・・・・おそらく意味がない・・・。意味が無いのだ、きっとな・・・』
サタンの小さな呟きは、シェゾの耳に届いていたのだろうか?シェゾは何も言わずに先ほどからの行動を微塵も変えずに、ひたすら試験管や緑の液体とにらめっこである。
――――――少女の手の中に在った一枚の画。あれが妙に心に引っかかったのだった。少女の持っている魔力でできる最大の魔法。美しいマジックのタネがあれにはあったような気がする。
軌道を変えたり、家を移動させたり、病気を治したりしてしまうだけで―――ひっそりとその魔力を失ってしまいそうな、そんなはかない・・・それでいて美しい魔法。
『私が干渉すべきでないと―――判断したのだ』
「あっそ」
今度は確実に彼に聞こえる範囲の声に対するシェゾの言葉はそっけない。しかもこんなよけーな言葉が後に続くからサタン様も黙っちゃいない。
「まーアンタがそん時、月を地上に降らせたり家を丸ごと月に移動させたりしてたら、今ごろ下界は大騒ぎで、月を見せるどころの騒ぎじゃなかっただろーが。誰にもメーワクかけなかった所は大いに誉められるべきところかもしれねぇな」
ぷち。
サタン様はごろりと寝返りを打つように振り返って、首だけでシェゾを睨んだ。
『・・・・・・ちょっと待て、シェゾ。私がいつ誰にメーワクをかけた』
自覚ないんか、このジジィ――――――と、シェゾが思ったかどうかは知らないが、
どがぁ!!
『あんぎゃ―――――――――!!!』
塔に――――――海よりも広く、空よりも高く、キングドラゴンよりも大きく、サタン様の悲鳴が響いていた・・・。
――――――で。
『殺す気かぁ!シェゾ!!』
「あのな、アンタがその程度の怪我で死んでたら、この世の誰も生きてやしねぇよ」
涙目の涙声でサタンはホータイでぐるぐる巻きの両足を抑えながら罵声を飛ばすサタンに対して、シェゾはあいもかわらず冷めた口調でつめた〜く返す。視線もいつもより冷たく感じるのは、たぶんメガネのせいだけではない。
「しっかし、情けねぇよなー。ロリコン走ってボケたか?空間移動に失敗して大鍋の上に落ち込むとは、魔界の帝王が聞いて呆れるぜ」
ロリコンはキサマだろう、と言いたいところだったが、気づくのが遅れて大火傷を負った両足を再び蹴られてはたまらない。ここは抑えてとりあえず言い訳だけ言い訳ておく。
『次元空間の前に台所を設置していたのを忘れていたんだ』
ンなところに設置すんなよ・・・これだから常識はずれのアホは・・・。
――――――無論、シェゾの心境である。しかし、これはもう普段言い飽き切っていることなので、口に出すことはなかったが・・・。かわりに少々疑問に思っているコトを聞いてみた。
「・・・・・・それはそれでいいとして、なんで魔法で治してしまわねぇんだ?」
サタンほどの魔力の持ち主、無駄なことには散々魔力を無駄使いしているというのに、なんでこうまで自分のような人間に馬鹿にされてまで両足の治療を拒むのか?
そんなシェゾの疑問にきちんと答える気がないのか、はたまた本人にもちゃんとした理由はないのか、サタンは『別に・・・単なる気まぐれだ』と、曖昧に答えるのみだった。
――――――ただ、外に出られぬと言うのはいかほどに退屈かを・・・ちょっと興味があった、ってトコかな?
サタンは心の中でそう付け加える。自分でもわからない。そんなコトをして何の意味があるのか。
(私はどんな魔法でも扱える。しかしあの少女が老女の前で見せるであろう魔法には、私の強大な魔力など、まるで歯が立たぬように思えてくる)
本当の魔法は、人に幸せを与えるもののハズ。
(魔法は一体どのようなものなのか・・・・・・魔法の偉大さは強いか弱いかだけで決まるものではないのかも知れぬ)
人間たちだけに使える魔法――――――これらは時折、眼を見張る。
(この傷が癒えた頃にでも・・・・・・また、人間たちの前で奇術を披露してやりたいものだな)
魔法でないモノを魔法のようだという。どこかに答えがあるのかもしれない・・・・・・。
「ま、今回オレはコイツを取りに寄っただけだ。見たトコ妙な細工はされていないようだし、仕置きの手間が省けたぜ」
『ハッ、野郎相手に小細工凝らして何が楽しい』
「口の減らねぇ怪我人もいたもんだな。・・・じゃ、オレは帰るぜ。お大事にィ」
『貴様に言われると気味が悪い。さっさと失せろ』
言うが早いかヤツの姿は消え失せる。――――――そういえばヤツもあの少女と同じ人間なはず。ヤツもあの少女のような魔法をときおりにでも使ってくるのだろうか?
・・・・・・・・・・・・・・・。
『ありえねぇ・・・』
自分以外に誰もいない空間に無為に響く声がなんともおかしい。
サタンは全く気づかない。彼にその気があれば彼の不在時に、転移でモノを盗って帰ることもできることに。
そしてやっぱり気づいてない。今、部屋へと通じる廊下には、蒼髪の美女と小さな魔導師が、談笑(ケンカ?)しながら彼の元へと向かっている。彼には意外なほど、優しい魔法を届けるために。
MAGICIAN
再び街角がにぎやかになる夜が続いたらしい。
『さぁ、今度はどんな珍しい魔法を見たいのかな?』
人々は口々にマジシャンに向かって叫んでいた。マジシャンは月光を浴びてまたあの不思議な響きのある声で言った。
『そのかわり、私にも貴方がたの美しいトリックを見せてくれるかな・・・?』
客の間に笑みがこぼれる。マジシャンの言った冗談であろう一言に誘われて。
しかしマジシャンは楽しみだった。なにがかといえばこれから起こる全てのコトに。
(さぁ、人間達よ・・・今度はどんなトリックを見せてくれるのかな?)
(私はいつでも楽しみにしているよ・・・・・・)
マジシャンはいつものように穏やかな笑みを浮かべていた。
あとがき
シェゾメガネ―――――――!!ハイ、ごめんなさい。まぁ、これが当初の目的ではありました。でも、当然それだけで終わらせるつもりはありませんでした。結局、メガネシェゾが全然目立たない形に終わりましたが(気づいた方も少ないのでは)。
この物語を書こうと思ったキッカケは・・・10年ぐらい前だったかな?ある子ども向けのまんが雑誌に、月を写真におさめて近所のおばあさんにお見舞いに行こうと友だち同士で盛り上がる心暖まる話を読んだことでした。月を撮るために意気揚々と集まった彼女たちは、カメラにフィルムを入れ忘れたことに気づく。途方にくれる彼女たちにある奇術師が絵を描いてみたらいいと提案する。きっとその方が喜んでくれるから、と。
奇術師は彼女たちにクレヨンと紙を与えて去ってしまいますが、彼女たちが月に餅をつくウサギを描いたところ、おばあさんに見せるとそのウサギが生き生きと動き出す・・・。彼は、魔法使いだったのか?という、ちょっと幻想的な話でした。たしかその物語は、都会に並ぶビル郡の影で悪くなった環境で暮らす人々に目を向けて欲しい・・・そんな思いを語られていたような記憶があります。あまり有名な雑誌ではなかったので、知っている人は少ないと思いますね。
サタンはいつも膨大すぎる魔力をアホなことに無駄遣いしてるけど、もしかして何かに気づきかけてるとすれば、こんなカンジかな?と思って書きました。サタンは人間には興味を持ってるみたいだし・・・アルルやシェゾ、ルルーたちの持つ『人間の可能性』みたいなものに、彼が興味を持っているとしたら、こんなところでしょうか(笑)。
ああ、それと・・・サタン、(一部を除いて)なんかカッコよくなってますね。いや、幻想的にしたかったから勝手にそうなっただけなんです。苦手な方いたらごめんなさい。ああそれから、ロリコンを意識した覚えはありません。・・・そうか、無意識か(爆)。
最後に、マリィぐらいの年齢の少女が夜に一人で草原で絵を描くなんて、危険すぎる・・・そう思われた方もいるかもしれませんね。・・・そうだよ、だから変な虫がつくんだ(爆)。まぁ、まだ奥手なサタンでよかったと言うことで・・・(死)。