エ イ プ   フ ー ル  

 

 

「なにそれ」

「あ、やっぱりこっちの世界にはないんだな」

 ラグナスはそう言いながら、出された茶をちょっとだけすすった。ドラコの入れたハーブティーはなかなかうまい。彼女らしいというか、刺激の強いミントティーだった。

「4月1日だろ? アタシはおまえの誕生日だってコトぐらいしか知らなかったけどなァ」

「同日なんだよ。4月1日はオレのいた世界では『エイプリルフール』といって、その日だけはウソをついても許されるって日なんだ」

「―――ウソをついて許されるのか?」

 ・・・ちょっとドラコには理解しがたかったようだ。ラグナスの座っているテーブルの脇に立っている大樹の一枝で羽を休めて、ひょいと上から彼の顔を覗き込む。

 ラグナスはカップを置いて、少し笑った。

「もちろん、どんなウソをついてもいいってワケじゃないケドね。ちょっとしたイタズラ程度のウソをついて、子悪魔の気持ちを楽しもうって感覚だよ。例えば・・・・・・」

 ラグナスはふとドラコの背後を指差して、

「ドラコ、背中に毛虫」

「げっっ!!マジっ!?」

 あわてて背に手をあてるドラコに、ラグナスはほんのヒトコト。

「ウソだよ」

「・・・・・・へ」

「こういうコトを、『エイプリルフールだから』って、許してもらえる日ってワケさ」

 いつもとは違う、何処かイタズラっぽいラグナスの笑み。

「・・・慣れないとけっこうタチ悪い日だな、それ・・・・・・」

 空慌て(?)に少々気抜けしたドラコの第一感想であった。しかし、彼女はいちいち細かいコトにはこだわらない。

「でも、楽しいかもな、そーゆーのも。アタシも誰かだましてみてやろーかなァ」

「騙すって程のものはどうかと思うけど・・・、だけどこの日は俺はワリと好きなんだよ」

「えー? なんかおまえらしくないセリフだなぁ」

 絵に描いたような勇者様。それを見事に演じきる剣士ラグナスともあろう人がイタズラできる日が好きだとは、ドラコには少し意外に感じられた。そんなドラコの言葉にラグナスは、ちょっと言葉に詰まったようだ。

「まぁ・・・俺も勇者の運命背負ってるからって、そういつも勇者やってたいワケじゃない。けど、やっぱ周りはそうはとってくれないだろ。こんな日でもなきゃ、俺は冗談もウソも言えないからね」

「・・・・・・そんなもんか?」

「勇者もまた人間ってカンジかな?」

「ふぅん、まぁアタシはおまえにウソをつかれようが、イタズラされようが別に気にしないけどね。まぁ、人間はいろいろ頭が固いところがあるからな。気にするコトないと思うケド。さーて!」

 言うとドラコは枝の上に立ちあがり、背の大きな羽をグッと伸ばした。

「どこか行くのかい?」

「遊びに行くのさ。騙されっぱなしじゃくやしーからな、誰かだまして一発『エイプリルフール』を広めてきてやる!」

 言うが早いかドラコは空に向かって飛び立っていった。なんというか、元気のいいおてんば娘だ。明るさで言えばあのアルルに劣りはしない。

 やがてドラコはバルコニーから東の空に見えなくなった。

「ん?」

 ベランダの扉が開く音がして、とそこにチコが焼き立てのクッキーを持って不思議そうに首を傾げている。

「あれ?ドラコさんの声も一緒に聞こえたような気がしたんですけど・・・」

「ドラコならさっき急いで東の山に『遊びに』行ったよ」

 それを聞いたチコは、ちょっぴり呆れた表情になった。ため息混じりで「えー、まだぜんぜんお話してないのに」とのコト。テーブルの上にクッキーを置いて、自分はラグナスの向かいにチェアに腰かけた。

「もう・・・、今日はラグナスさんのお誕生日だからこの神殿で、あなたをささやかにお祝いしようと言い出したのはドラコさんなのに・・・・・・。ウィッチさんも早くにどこかに行っちゃったし、一体ふたりとも何しに行ったんでしょう」

 そう、ドラコはともかくウィッチは今朝早くからパーティの準備をしていたが、まさにパーティが始まろうとした時だろうか、急に『急用ですわ!』と行って神殿を出ていってしまったのだ。

 チコの誰ともなく聞いた問いに、ラグナスは笑って答えていた。

「ふたりとも『エイプリルフール』にちなんで誰かをハメにいくんだってさ」

「え、『エイプリル』・・・? なんですか、その怪しい響きの異国語は・・・・・・」

 これで何人目だったっけ?――――――相手が代わっただけで、エイプリルフールの話はリプレイするのであった。

 

■                ■                ■

 

 ところ変わって、ここは街外れの雑貨屋さん。店内に人気は少なく、いるとすればレジ前で居眠りこいてる店長と、黄色いどーぶつを左肩に置いた15歳前後のお嬢さん、たぶんお客の1人ぐらい。と、そこへ・・・・・・

「あら、やっぱりアルル、いたのね」

 突如として、店内に堂々と大きな胸を張って現れたのは、しなやかな女性美を露出度の高いドレスでビシリと決めた、少しお嬢様っぽい女性。彼女の呼びかけけに答えたのは、

「ルルー」

 先ほど紹介した、青い肩アーマーのお嬢さん。彼女の名前はアルル・ナジャ、後に現れたルルーと友達だかライバルだか、―――な、関係(なんのこっちゃ)。ルルーは自然にアルルの隣に立ち、

「さっきキキーモラに、ここに向かったって聞いたから」

と、言った。そういえば、街の通りでキキーモラが公園の掃除をしていたっけ。ちょっと話して別れた記憶が。

 商品棚から手を引いて、アルルはルルーを振り返る。

「ルルーもチコの神殿からの帰り?」

 アルルは先ほどまで、チコの神殿でラグナスの誕生日を祝ったばかり。ちょっと急ぐので早めに神殿を出たのである。帰りにここで買い物をすませて、久しぶりに迷宮探索でもしようかと思っていたのだ。やっぱ春だし(根拠なし)。

 しかし、アルルは神殿でルルーの姿を見た覚えはない。

「違うわよ、私は参加してないわ。ヒマじゃないのよねェ、あいにく」

 やっぱりね。いれば必ず一度は話(?)を交わすはずだし。

「ボクに何か用?」

「まさか、私がここで用を済まそうと思ってきたら、あんたが勝手にいただけよ」

 そう言いながら、ルルーはひょいっと棚からヘアスプレーを取ってカゴに入れた。

「・・・あっそう」

 まぁ、そういうコトもある。たいてい偶然会うんじゃなくて、ルルーの方が一方的に用がある時にボクたちは会うコトが多いから、ちょっと何か用なのかな、って思っただけ。

「そういえば・・・」

「ん?」

「今日は『エイプリルフール』なんですってね」

 エイプリル・・・?瞬時にはルルーが何を言っているのかわからなかったけれど、ちょっと前に聞いた言葉だっていうコトがすぐにわかった。

「あれ、なんで知ってるの? ルルー、神殿にいなかったのに」

 ラグナスから聞いた異世界での話。ラグナスの住む世界には、そんな日があるコトを彼が話してくれのだ。

「キキーモラも神殿にクッキーを届けに行ったんだって。その時に神殿にいた誰かに聞いたんじゃないかしら」

「へー、ボクもラグナスに聞いたよ。その日はウソをついても許される日なんだってね」

 アルルはラグナスの話を思い出しながらそう言った。ところがルルーはそんなアルルの言葉に少し首をかしげて

「あら?私が聞いた話では、『エイプリルフール』はウソをつく悪魔の子どもが遊びに来るから、その子が寂しがらないようにみんなでウソをついて遊んであげようって日だって聞いたわよ」

「え?」

「・・・・・・あら?」

 ちょっとの間、しらけた空気が流れていた。

「でも、ボクは直接ラグナスから聞いたんだから間違いないよ・・・・・・?」

「なんだか・・・ウワサに尾びれがついちゃってるらしいわね・・・・・・」

 ともあれ、ウソをついてみんなで楽しもうというコトは変わっていないらしい。

 

■                ■                ■

 

「お、あれは・・・・・・」

 『黒の森』上空を一直線に飛んでいた半龍半人のドラコ。木々の合間から見え隠れしている街道へ続く、森の中の(おそらくは)道を、ゆっくりと歩く人の姿を見つけた。

 もしその人影が銀髪でなかったら、真昼間だというのにあのようにくら〜い雰囲気を持っていなければ、また春一番というこの麗かな季節に上から下まで真っ黒のローブを着込んでいなければ、ドラコは彼を別人と判断してそのまま森を飛び去っていたに違いない。

 ドラコはふっを羽で風を制御し、そのまま急降下しながら人影の名を呼ぶのだった。

「おーい、シェゾ!」

 人影、シェゾの方もドラコの気配に気付い(てい)たようである。しかし、ドラコが明るい真夏の太陽のような勢いで呼びかけているのに対して、このシェゾの受け答えときたらまるで何千年もほっとかれたままの遺跡に溜まったあのこもった空気のような・・・

「・・・なんだ」

と、ヒトコトで言えば何とも気のない返事。しかしドラコは細かいコトは気にもしない女の子。中空でひらりと宙返りを決めてシェゾの前に下りたちながら、

「めずらしいな、おまえみたいな陰気なヤツが真昼間から出歩くなんてさ」

と、言った。シェゾは「ほっとけ」と、まずヒトコト。そして、

「何の用だ」

 呼びとめられた時は一旦足を止めたものの、相手がドラコだとわかった途端再び歩き出すシェゾであった。しかし、ドラコとて別に立ち止まって話すつもりもなかったので、シェゾの隣につくようにして歩き出す。

「別に用って程のモンじゃないんだけどさ、おまえ今日何の日か知ってる?」

「・・・知らんな」

「今日はラグナスに言わせれば『エイプリルフール』って言うんだってさ」

「なんだそれは」

「さー、アタシも色んな人に話してきたからわっすれちゃったなー」

「・・・・・・思い出してから人に話せ」

「なーんて、ウッソだよん★」

「・・・・・・あ?」

 急に足を止めてドラコをちょっちゆっくり振りかえるシェゾは、ささやかではあるが明らかに、こう・・・・・・

(・・・げ!? マジホンキで怒りモード?!)

 直感的にヤバイッッ!と判断したドラコちゃん。どうやら騙す相手を間違ったらしい。虫のイドコロがなかなかに悪いタイミングだったようだ。こんな状況で『エイプリルフール』はウソをついても許されるー、とか言ったところで通じるワケがないコトは目に見えていた。

 そうとわかれば。

「い、いや!そうだな、思い出してから言うさ!じゃー、あばよっっ!!」

「こらっっ、待ちやがれ!ドラコッッ、てめぇ明らかに忘れてねぇじゃねーかぁっっ!!」

 シェゾの発言を聞くのもそこそこに、ドラコは一気に羽を伸ばして空に向かって舞い上がって行った。

 『36計逃げるにしかず』、である(笑)。

 

■                ■                ■

 

 雑貨屋で、ひととおり買い物を済ましてルルーと別れたアルルは、街はずれへと続く街道を歩いていた。冒険に必要なアクセサリや携帯食は街で揃えた。あとは薬剤だが、これは街の薬屋よりもウィッチのお店へ行ったほうがより高能な薬を買える。値は張るが、備えあれば憂い無しだ。冒険の前にはアルルは必ず店へ立ち寄るコトにしていた。ちょっと遠いが夕方までにはつけるだろう。

 アルルは西の空を見上げた。

 太陽が高い。もう昼過ぎである。急用と言って朝早くに神殿を出ていってしまったウィッチだが、もう塔へと帰っているだろうか。まぁ、ウィッチがいなくてもきっと店先にはウィッチのおばあさんがいるだろうから、薬草は分けてもらえるだろうケド、アルルにしてみれば顔見知りの友人が店にいてくれたほうが気が楽だった。そんなコトを考えながら歩いていた時である。

「アールル♪」

 自分の真上から自分の名を呼ぶ声があった。並木道じゃあるまいし、どう考えても空中から呼ばれているとしか思えない。・・・と、なれば相手は自然と限られてくるワケで、例えばドラコやハーピー、ウィッチなど。しかし、これは考えるまでもなく、

「・・・・・・サタン」

・・・なのであった。サタンはふわりとアルルの前に降りたって、まるでアルルの行く手を阻むよう。やれやれ、話を聞き終わるまで通してくれそうにないな。

「はっはっは、久しぶりだなわが后。今日は小話を持ち合わせていてな。さきほどウィッチの塔で面白い話を聞いてきたぞ!」

 サタンは白い牙を見せて得意そう。が、そこでアルルはピンと来た。なにげなーく聞いてみる。

「塔?ウィッチに聞いたの?」

「え?いや、いやいやいや!違う、違うんだ我が妃!たしかにウィッチも可愛いくて、魔力も高いが・・・って違うではないか!!そう!今朝はウィッシュに茶会に呼ばれていてな、ウィッシュはウィッチに聞いたといっていたが・・・あ!いやいや、別に浮気とかそういうんじゃないぞ、たまたま向こうが誘ってきて、たまたま私がそれにさりげに乗ったとゆーか!」

 意味不明に慌てるサタンの言葉をアルルはあまり聞いてなかった。聞いていたのは『ウィッシュがウィッチに話を聞いた』の一部分。サタンはなおも「ウィッシュとは昼から用があるらしいから昼前に別れた、これはホントだぞ!」などとのたまっている。

(ふーん、ナルホド。ウィッチは神殿にいて、ラグナスとも話してた。間違いない)

 ――――――そう、サタンはエイプリルフールのコトを言ってるんだ。

「ところで、だ」

 場を切り替えたいらしく、サタンはそこで大げさに咳払い。

 サタンの頭の中はざっとこんなもんだった。↓

『アルルよ・・・実は残念なことに、私は今から長く旅立たねばならない。許してくれ・・・どうしても倒さねばならない悪がいるのだ』

『ええっ、サタン・・・愛するボクのことを置いてどこへ行ってしまうの!?』

『危険な旅だ、お前を連れてゆくことはできない・・・なぜなら、私はお前を愛しているからだ!もちろんカーバンクルちゃんも!!』

『愛しているなら連れて行って!ボクだってキミを愛してる・・・愛する人を危険な所に行ってしまうのをただ見過ごすなんてできないよ!ただ無事を祈って帰ってくるのを待っているだけなんて、不安すぎるよ!』

『アルル・・・』

『それに・・・キミがいなくなってしまったら、あの変人変態エロロリきのこ大魔人(←シェゾのことらしい)から誰がボクを守ってくれるのさ!!あんなヤツに迫られながら、キミの帰りを待つよりボクたちはキミと一緒にその悪を倒すよ!!』

『わかっているッ、わかっているんだ、我が妃よ!当然ヤツは八つ裂きにしてから発つ、それは約束しよう!だから・・・』

『バカッ!アイツは首だけになってもボクを襲ってくるような変態なんだよ!?・・・わかってる、キミはボクのことなんてどーでもよくなったんだね?愛が冷めちゃったから、そんなこといってボクをキミから遠ざけようとしてるんだね・・・!?』

『そんなことはない!私が愛しているのは・・・わかった、アルル・・・すべてを明かそう!今のことは全てウソだ!!』

『・・・・・・え?』

『すまなかった、お前がここまで私を愛していたことはわかっていたつもりだったのに・・・エイプリルフールとはいえ、私はなんと言う罪を!』

 実は、アルルにはサタンの考えていることが手に取るようにわかっていた。なぜなら、サタンはこれらのセリフを(アルルの分も含めて)すべて声に出していたからである。しかも、宝○歌劇団並みのスタージェスチャー付だった。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 ひとり芝居は、見てる分にはあほらしすぎる。しかし、サタンの中では芝居は徐々にエスカレートし、現実との境界がブチ切れたようである。頭の中で描いた自らの罪に懺悔していたらしいサタンは、突然マントの中からバラの花束を取り出し、バッと両手を差し出した。

「アルルよ!この罪の侘びにお前の願いを叶えてやろう!!さぁ、遠慮なくこの胸に飛び込むがいい!」

「ボクの願いを知ってるの、サタン」

 アルルはあえて、笑顔で答えた。頭の中で、一計を案じながら。

「当然だ、お前の願いは私の願い!私の願いもお前と同じ・・・!さぁ、このままここから星空のハネムーンへと飛び立とうじゃないか!!愛しのカーバンクルちゃんと一緒に!」

「でも、ボク・・・さっきキミに騙されたばかりだからなぁ・・・」

 実際、騙されちゃないのだが・・・あえてここはサタンに合わせる。まぁ、こういうことは日常茶飯事だったりするし、アルルはすでに慣れていた。

「はっはっは、すまんな我が后!そんなコトを気にするな。今日は4月1日、エイプリルフールではないか。少しお前のことをからかってみただけだ。4月1日は、ウソをついた者を責めてはならない日なんだぞ、我が妃ッッ」

「は?何言ってるのサタン」

「え?」

「エイプリルフールは知ってるけど・・・・・・今日は4月1日じゃないよ?」

「・・・・・・へっ!?」

「今日は4月2日!エイプリルフールは昨日でしょ。もしかして休みボケ?最近あったかいからねぇ・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「ってコトで!」

「ひっ!」

「さっきはよくも騙してくれたねぇ。でも今日はもう2日ってコトはキミ、ボクからジュゲム食らっても文句言えないよねぇ」

「・・・・・・い、言えないかもね・・・」

「じゃ、遠慮なく!じゅじゅじゅじゅじゅ・・・ジュゲム―――――――――ッッ!!!

 ついでに、

「ぐっぐー」

 みー ちゅどーん!

「がっはー!」

 ちなみにサタン様は腐っても魔界の帝王、ジュゲム一発+ビーム程度で死にゃしない。

 

 

「ざーんねんでした!今日はホントに4月1日、エイプリルフールだよー♪」

「み・・・見事だ、アルル・・・・・・」

 ガクッ

 見事にばたんきゅ〜なのでありました。

「ごめんね、サタン!今日は急いでるんだ。あ、これはホントだよ」

「ま、待て!どこへ行くんだ、アルルっっ!」

「・・・・・・・・・」

 ちょっと考えてアルルは振りかえってこう言った。

「ルルーんち♪」

「ぐぐぅ!」

 再度サタンに背を向けて、ひょいっとわき道にそれた。同時にサタンの視界から消えたのだった。そう、今日はエイプリル・フール、ウソをついても許される★

 

■                ■                ■

 

「ああ、あれはガセネタですわ」

 そんなウィッチの言葉に唖然となったシェゾ。ウィッチはなおも、「そんなおいしい話がホントにあるならアナタに言う前に私が向かってますわよ」と続ける。

「ガ、ガセネタ・・・!?つまりこのほうきには初めっから何の魔力も帯びていたかったと・・・・・・!」

「トーゼンですわ、でも古の大魔女『イーファ』が愛用していたとされる極めて希少価値の高い代物ですのよ」

 ンなコト言われたって魔導師たるシェゾにとって、ほうきなど単なるガラクタでしかない。ここで黙っていては思いっきりただ働きである。フザケンナである。

「てっテメェ!オレは確かにオマエの口から『魔力のあるほうき』だと聞いたからこの話に乗ったんだぞっ!」

「もちろん報酬は致しますわ、でも魔力の方は4月1日ってコトでお許し願えませんこと?」

 「そうでも言わなきゃあなたやってくれそうにありませんもの」などと、あくまで気軽にのたまうウィッチに心底腹の立ったシェゾはすっと右手に闇の剣を出現させ、わずかに怒りのオーラを身体に纏わせながら、静かにしかし悪魔の如く睨みつけた。

「テメェ・・・このオレが誰だか知って言ってるのだろうな・・・・・・」

 その殺気を帯びた瞳は氷のように冷たく、今にも射抜かれそうな勢いだ。

「じょ、ジョーダンですわよ!! なにホンキになって・・・」

 あわてたウィッチはそこで何かハッと気付いたような表情になって、シェゾの顔を覗きこんだ。

「もしかしてシェゾ、あなた今日は何の日か御存知ない・・・・・・?」

 無邪気で興味津々といったカンジのウィッチの問いにシェゾは一瞬、「は?」という表情になったが、すぐに仏頂面に戻った。

「バカにするな、・・・・・・『エイプリルフール』というらしいな」

「・・・なんだ、知っていたんですの」

 ウィッチはきょとんとしている。今の反応が意外だったのだろうか。

「・・・・・・トーゼンだ」

 シェゾはそう言い切ってみたものの、まさかついさっきドラコからムリヤリ聞き出したとまではちょっと言えない。

 いくら逆上していたとはいえ、呪縛で空からひきずりおろしてなかば脅迫に近い形で吐かせたなどとバレれば、間違いなくヘンタイ扱いである。全く苦労して手に入れたほうきがガラクタだったりしなければ、ああもキレはしなかっただろうが・・・。

 しかし、さっきまで呆けたような表情だったウィッチが、気付けば不機嫌そうな顔になっていた。いつの間にか彼女は愛用のほうきを脇に抱え、そっぽを向いている。

「なら、その程度で怒らないでいただけます? 全くショーダンの通じない方ですこと!」

 そう言い残すとウィッチはほうきとともにふわりと宙に浮かび上がり、窓から空へ飛びたって行った。その姿は少し幼くもどちらかというとウィッチの方がバカにされたコトを怒っているように見えた。

「報酬ですわ!騙したお詫びも兼ねて弾んでますわよっっ!」

 窓の外から金貨の詰まった皮袋がドチャリと落ちてきた。すでにウィッチの姿は見えない。

「・・・・・・なに怒ってんだ!? あのヤロッ!」

 騙されたのはこっちである。

 ウィッチもウィッチでちょっち不機嫌。雲の上を飛びながら呟いた。

「なんですの、ちょっと往復5000キロメートルほどの体力と時間が無駄になっただけじゃないですか」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。モノには限度っちゅーモンが(汗)

 でも彼女の場合、どぅせ騙すなら自分に利益がある形で!ってなモンなんでしょうね。

 

■                ■                ■

 

 ルルーの屋敷でチャイムが鳴った。ミノタウロスの報告を受けて、ルルーが扉の取っ手に手をかける。

 扉を開けるやいなや、(買いなおした)真っ赤なバラの花束ごとホールに入ってきたのは・・・・・・!

「呼ばれて飛び出て、じゃじゃじゃじゃ〜〜〜〜〜〜ん!!」

「サ、サタン様!?」

「おお、ルルー! 久しぶりだな、ところで我が后は・・・」

 来ていないか?、という言葉は続かなかった。

「サ、サ、サ、サ・・・・・・・・・!!」

「?」

 ドキュ―――――――――ン ギィ バタン!!

 一瞬現れたルルーの姿が一瞬にして奥の部屋に消え、

――――――『バカ―――ッッ! サタン様ならサタン様と最初に言いなさいっ! このバカウシ―――!』

――――――『うぎゃ――――っっ!! ルルー様、お許しを〜〜〜〜〜〜っっ!』

――――――ドカバキビシドスバカメシャグシャメリメリドズーンッッ!!

「・・・・・・・・・・・・(汗)」

 世にも恐ろしい音が奥の部屋から響いてきたかと思うと、スチャリとどうやら衣装換えしてきたらしいルルー嬢が、

「いらっしゃいませ、サタン様・・・★ もてなしの準備は整ってございますわ・・・・・・vvv」

と、世にもおしとやかに現れた・・・・・・。

「い、いや、丁重な出迎えをありがとう」

 固まった笑顔のまま、サタン様は思わずそう返すしかなかったようである。

 

■                ■                ■

 

 この湖を渡れば、ウィッチのお店は目前だ。ただ、この湖がやっかいで、船が浮かない。“気過水”と呼ばれる浮力が極端にかからない魔に属する類の水で、あらゆる物質を湖底に飲み込んでしまう。当然船は浮かないので、湖底に面した交通手段が整えられていない以上、普通なら迂回するしかないと言うことだ。

 だが、アルルは普通じゃなかった。魔導師であって、「魔」力に関する知識と技術は普通の人より高いのである。

「おっとっと・・・カーくん、騒ぐと危ないよ」

 アルルは、水面をすべるように歩いていた。足元に“気過水”が持つ属性と反属性の魔法をかけているので、“気過水”の発する魔力に反発して体が浮くのだ。当然、普通の水ではこの芸当は無理である。
 かける魔法と“気過水”が発する魔力のバランスを取るのが多少難しいが、まぁ今日は風も少ないし、ハデにこけることは無いだろう。氷上をスケートで滑るがごとく、アルルは難なく湖の中央あたりまできていた。

 何事もなければ、摩擦がゼロに近いこの状態。勢いに乗って大いに気持ちよく湖の向こう側についていただろう。

 なんというか・・・彼の運の悪さは、時に彼女の強運を凌ぐほどに悪いのかもしれない。

「ん?」

 ふと、下から風が吹き上げる感覚が襲った。・・・風じゃない、魔法による圧力だ。反射的に、湖面を覗き込む姿勢をとったアルルの行動の何が悪い?

「っう、わああああ!!」

 ザバアアアア

 湖中から黒い塊が浮き上がってきたと思うと、それは実は黒っぽい“気泡”で、湖面に現れた途端、パンッと割れた。

「ったく・・・とんだ無駄足だったぜ。って、ん?」

 中から姿を現したのはアルルがよく知る(知りたいとも思ってないが)人物だったが、アルルはそんなことを確認できたわけではない。なぜなら、

 ドボーン!

 ハデにバランスを崩して、こけてしまったからである。この状態ならアルルでなくてもこうなるだろう。

「・・・アルル?」

 一瞬、そうか、と納得して去りかけた彼だが、すぐにここが“気水湖”であることを思い出したようだ。半ば反射的に振り返って、湖中の中ほどに沈みかけてたアルルの手を取るに至ったのである。

 ――――――ところ変わって、気水湖の湖畔である。

「で、何でオマエがこんなところにいるんだ?」

「それはこっちのセリフだよっ! こんな湖の底でキミは一体何してたのさ!? シェゾ!」

 そう、アルルの前に突然現れて思いがけない寄り道をさせてくれたのは、言わずと知れた闇の魔導師シェゾだった。

「・・・オレか? オレは、オレの住処がこの湖底に通じてて・・・って、なんでキサマにンなことをいちいち言わねばならん!? 馬鹿馬鹿しい!」

「なにひとりで怒ってんのさ! どーせまたなんか怪しいことやってたんでしょ! とばっちり喰ったのはこっちなんだからね! 服も髪もびしょびしょだし・・・責任とってよ!」

「何の責任だ! 不注意だったのは認めるが、キッチリ助けてやったんだ。これ以上キサマに何をしてやるつもりもないぞ!」

「あっそう、そーゆーこと言うわけ。そー言えば、ボク今からウィッチのお店に行くんだよね。このことウィッチに話しちゃおっかなー」

 シェゾの言葉と顔が固まった。アルルはこういう状況に陥ったシェゾを丸め込むのはそう難しくないと知っていた。それは、すでにアルルの趣味とも化しており、彼をからかうことはアルルにとって割合楽しいことだったりする。

「〜〜〜〜〜〜何が狙いだっっ!」

 別に狙いってほどのことではないけれど。

「そーだな、濡れたままお店に行くわけにも行かないし・・・服が乾くまでヒマだから、話し相手になってくれる?」

「・・・・・・・・・・・・」

 彼は、(全く想像通りの)思いっきり嫌そ―――――――――な顔をしたが、断るつもりなら「断る」の一言で一蹴してくるはずである。結局シェゾは、アルルの「じゃ、決まりね」というダメ押しの一言であきらめたようだ。

 

 ――――――話題は、今チコの神殿で行われているラグナスの誕生会のこととなっていた。これが、最後の話題となる。

 まぁ、あたりまえかもしれないが、シェゾはそんなところに行ってなかった。一応たしなめておいたが、自分もそれほど長い時間いたわけではないから、あまり偉そうなことは言えなかったが。

 そして意外だったが、シェゾはラグナスの誕生日だということは知っていたらしい。・・・関心はあるみたいなんだよねぇ、嫌っている(・・・ふうに見える)ワリに。・・・うーん。

「シェゾってラグナスのことどう思ってるわけ?」

 常々気になってたことだった。まぁ、本人に聞いたところであまり話してくれそうにはない話題なんだけど。

「はっ、気にいらねぇな。偽善者気取りで他人に尽くすなんざ、オレには気味の悪い行動にしか見えん」

「ははは・・・」

 まぁ、そんなカンジなんだろうなとは思っていた。彼が彼だけに、彼に敵意を持つのは、ある意味当たり前かもしれないし。

「ウィッチのように善意の裏に私的な欲が見え隠れしている方が、いっそわかりやすくていい・・・。ヤツの善意行動は自己犠牲でしかねぇ。見ていて気分が悪くなる・・・と言うか、都合よく利用されてんじゃねぇかって、イライラする」

 ちっ、と最後のほうに舌打ちしていたが、アルルはちょっと驚いた。

「へぇ・・・」

「? なんだよ」 シェゾは怪訝な顔つきでアルルを見た。

「いや、・・・シェゾって、けっこうラグナスのこと、よく見てんだなー・・・って思って」

「・・・・・・は?」

「もっと、あからさまに嫌ってるんだと思ってたよ」

「・・・・・・・・・ふん」

「?」

 あれ? ムキになって否定してくると思ったのに。なんだか今日は妙に自分の挑発につっかかってこない。

 何気なくわかりやすいと思っていた彼の行動をつかみきれなかったことに、少しアルルは面白くないと思った。

「じゃあさ、シェゾはボクのことはどう思ってる?」

 何気に予想した行動が今回に限ってよく外れるので、少しからかってやろうと思っただけだ。いつもの「何でオレがそんなことに答えなければならないんだ」という言葉が返ってくれば、いつもの調子に戻るはず。アルルにしてみれば長い付き合いの上で、確信に近いものがあったのだが・・・。

 しかし、返ってきた言葉はアルルの思考を遙かにしのぐ、一瞬ではとても理解不能のモノだった。

「オマエのことか・・・そうだな、顔はそれなりに悪くは・・・いや、可愛い方だと思うぞ」

「・・・はぁ?」

 聞き間違えたか。雪が降ろうが槍が降ろうが天地がひっくり返ろうが、この人の口からは決して出てくるはずのない言葉が聞こえてきた気がした。

「まるっこい体つきも、オレとしてはそれくらいの方が・・・いや、まぁオレのことはいいんだが。性格については・・・まぁ、飲んだくれで人に絡むのもどーにかして欲しいが、その仔ネコみてぇな目で向き合われると・・・それより居心地が悪いこともある」

「あのー、もしもし???」

と、言ったつもりなんだろうが、声が固まって声になってない。普段の頭なら幻聴かと思うだろうが、アルルにとって今はそんな可能性を疑う感覚さえ麻痺していた。

「おまけに素直で、付き合うこっちの調子が狂う・・・。お人よし過ぎるんだよ。ホントにオレを敵だと思ってんのか、疑うこともあるくらいにな・・・」

 とりあえず、今この人の頭が壊れたのか、単なる夢なのか、はたまた天変地異の前触れかを判断するのが先だと判断した。判断する間にも、異次元からの音はまだ続いている。

「ただ、・・・明日には忘れろよ! ただ、オレにとってそういう時が最近では一番・・・・・・って、聞いてるのか?」

「・・・・・・・・・」

 ハッ

 アルルは唐突に気づいた。今日はラグナスの誕生日、つまり、そうだった、そうだったっけ。

 聞いてない、が正しいだろう。思考がとまったような無表情で、口ではなにやら聞き覚えのある呪文を唱えている。

「?」

 シェゾが注意して(不注意にも)、その呪文に耳を傾けた。傾けた瞬間、その行動は間違いだったことに気づいたが。

 

■                ■                ■

 

 遙か西の、森に囲まれた暗い館のバルコニーにて、サキュバスが葉巻を吸いながら

「・・・・・・・・・ねぇ、今なんか揺れなかった?」

と、言った。

「ふっ、もう騙されませんよ。ったくどこではやったかわからない低レベルなイタズラばかり・・・・・・・・・」

「フン、アンタが単純なだけだろ。どーでもいいケド、今のはマジよ。なんか遠くで火山でも噴火したのかしら」

 そこでインキュバスは初めて風に火の匂いが混じっているのに気付いた。そして、

「・・・・・・確かに本当のようですね、でもこれはすさまじい魔導の暴発のほうが可能性が高いんじゃないですか」

 火の匂いに隠れて、すこし魔力の気を感じ取っていた。

「ま、なんだっていいケドね」

「どーでもよくてなんでもいいなら話しかけないでください」

 揃えばとことん口数の少ないコンビである。

 

■                ■                ■

 

 もうもうと土煙が立ち込めている。アルルは、今しがた吹き飛んだ闇魔導師が最後に消えた空を見上げて、ため息をつく。

「あーあ・・・一瞬、ドキドキしちゃったよ。シェゾってあれで、顔だけはいいからなぁ」

「ぐぐぅ」

 カーバンクルもジュゲムのおかげでお祭り気分だ。ピコピコ小さな手足を動かしながら、モダンダンスの特訓中。

 そう。

 とりあえず今日はエイプリルフールだ。危険なコトをのたまうヤツには問答無用で吹き飛んでもらおう。そうそう、誰かさんも言ってたじゃないか。『エイプリルフールは、シェゾをブッ飛ばしても許される』(言ってねぇ!!)

 いやいや、噂には尾びれがたくさんつくものだ。(マテ)

 服はすでに乾いていた。気過水である。大して水分が含まれていないため、すぐ乾く。とりあえずウィッチの店に行って、さっきのことは忘れよう

 アルルは、対岸についた時、ふと思い出して気水湖を眺めた。

 そう言えば・・・

 ――――・・・オレか? オレは、オレの住処がこの湖底に通じてて・・・

 今日は時間が無いけれど、この湖はアルルの家から遠くは無い。

「・・・今度探してみようかな」

 ふと、そんなことを思って、気水湖に背を向けた。

 やれやれ、余計な時間をくってしまった。遠くで夕日が傾きかけてる。騙しと騙し合いにちょっと心臓の悪い日だが、そんなちょっと変わったエイプリルフールももうすぐ終わり。

 

■                ■                ■

 

「でさぁ、もーシツコイくらいに追いかけて来るんだよ、シェゾのヤツ!」

「そりゃあ・・・・・・そんな言い方されっぱなしじゃー気になるのも無理ないと思うけど・・・・・・」

 ドラコがチコの神殿に戻ってきたのは、今しがた。その時まだひとりで入れなおしたお茶を飲んでいたラグナスが、彼女の土産話(?)を聞いているのだ。

「で、結局君はどうやって彼の追跡を振り切ったんだい?」

 ラグナスは心持ち楽しそうに、ドラコにたずねてみる。ドラコはちょっと「う”」、っとつまって

「いや、なんかもーあんまりしつこいモンだから、こりゃなんとかキリつけなきゃ永遠に追いまわされる気がしてきちゃって・・・・・・だからって、ショージキ言ったら殺されかねないだろ?」

 バツが悪そうに話しつづけるドラコをみて、ラグナスは

「・・・・・・まぁ・・・ねぇ・・・・・・」

と、やっぱり言いにくそうに相槌を打つ。――――――たしかにくだらないと言えばそれまでだが、シェゾはかなりプライドの高いヤツだし・・・。

「だから、ウソ言ってやったんだ」

「・・・は?」

「エイプリルフールなんだから、許されるだろ?な、そーだろ?」

「ちょっと待て、ドラコ。何言ったんだ、シェゾに」

 意味がわからずに、思わず聞き返すラグナス。ことによっては恐ろしい。・・・ドラコは開き直ったらしい。

「『エイプリルフールはホントのコトゆー日だ』って言ったんだよ・・・・・・」

「・・・・・・・・・え??」

「『オマエみたいな素直じゃないヤツが、素直になってもいい唯一の日だ』ってな」

「・・・それ、シェゾ信じたのか?」

「さあ・・・、でもそれ聞いてなんか一瞬考え込んでたみたいだけど・・・・・・」

 ――――――『はっ、ならどっかの小娘みたいにバカ正直なヤツには意味のねェ日なんだな、くだらねぇ』

「・・・・・・とか言ってたから、信じたんじゃないの?」

「うわー・・・バカ・・・・・・。それ以前にひでぇ」

「でもホントの『エイプリルフール』はウソ言っても許されるんだろ?だったらアタシのやったコトだって、許されるよな!」

 彼女の顔は明るい。しかし、冷や汗はちょっと隠せないでいた。

 しかし、ラグナスは思考する。『運命』にしらず縛られる見えない糸を少し感じた。

「・・・・・・・・・さぁ・・・いーんじゃないの?別の意味で・・・」

「? どういうイミさ」

「あいつにだって素直になってもいい日っていうのがあってもいいんじゃないかなって思っただけ。そういう日でもなきゃ、あいつ本当の感情なんて滅多に出さないような気がするし」

「・・・多少なりとも『闇の魔導師』ってコトを意識してるんだろ?シェゾなりに」

 ドラコの最も当たり前とする意見に、ラグナスは「そうだな」と、答えた。

 ちょっと遠くを見る彼の目は、何を見ようとしていたのか。ドラコはラグナスの視線の先を真似て見ながら、

「・・・・・・そーいや、おまえも言ってたよな。冗談言える『エイプリルフール』が好きだって」

 ラグナスは何も言わずに紅茶を飲み干すだけだった。

 ドラコは改めて彼の顔をいたずらっぽく除き込む。彼の表情がどう変わるか見たかったから。

「ちょっと、シェゾに共感でもしたのか?」

 彼は何も言わなかったが、その顔はちょっと嬉しそうなカンジだなと、ドラコには思えた。

 もうすぐ夕暮れ。今年のエイプリル・フールも、もうすぐ終わり★

 

■                ■                ■

 

END