タンザニア共和国 (2) / ゴゴ音楽



BAGAMOYO / HUKWE ZAWOSE

 LAIKA 3510241.2

1989年作品 ドイツ録音

 キーワード
当為の音楽
 参考サイト

広島で本場のとれたてを食し、 「牡蠣とはこうか!」 と、はじめて得心する。

そういった体験は、ワールドミュージックの世界にもございます。本当のホンモノに触れることで、それ
まで理解不能だったジャンルの存在価値が、一挙に了解される。昨日まで水墨画のように輪郭をにじ
ませていた一群の曖昧な所蔵CDが、にわかに細密画のごとき細部を顕わにし、イキイキと現前を始
める。つまり、意味がわかる。ジャンルのたしなみ方、その勘所がわかるようになるのです。

ホンモノが、あり余る地力で、聞き手の快感の回路を開いてしまう。昨日の耐え難いクサみを、今日
癖になる味わいへと変えてしまう。何でこんなものを食べるようになったのか。どう良さを見出した
のか。そしてそれを、どう「みんなのもの」として共有するに至ったのか。そういった快楽の文化を生み
落とした、一民族の歴史的事情みたいなものを含めて、何となくスコンと感覚的に了解させてしまう。
そんな劇的な体験をもたらす音源が、たしかに存在するのです。

タンザニア国立舞踊団のメイン奏者をつとめたフクウェ・ザウォーセバガモヨプレイヤーズの演ずる
滋味満点のゴゴ音楽は、それまで私が何となく苦手に感じていた親指ピアノなる楽器と、これを核に
据えた広域のアフリカ音楽全般に対する、私の快感の回路を開きました。この素朴な造りの楽器が、
なぜこれほどまでに、世界の耳目をひきつけるのか。その理由の核心を本音源は、イリンバの独奏を
心行くまで聴かせる事によってではなく、むしろイゼゼ(弓奏楽器)ほか多様なタンザニアの民俗楽器
との合奏の中に聞かせる事で、我々に合点させます。何でこんな楽器を弾くようになったのか、どう
良さを見出したのか、どう「みんなのもの」として共有したのか、ただただ感覚的な次元において了解さ
せるのです。籠のほととぎすの発声音源ではなく、沢のせせらぎと木々のざわめきの中に限り
なく
当為的に木霊する囀り。それにこそ、全一的な音楽の快楽はある。不思議のない話ではないか
と思います。

さて、何についても独学上等の、この私がそれでもなお、人生の唯一の師匠と敬う、某美術学校の
T 学長はこう言いました。

「皆さんはすぐこの色が綺麗とか、好きやとか言いますけど、この世に単独で綺麗な色なんてもんは、
存在しないんです。もしある色を綺麗や思たら、それはその周囲の色とあっとるからなんです。パレット
の上で綺麗な色かて、そうです。同じ白でも他ならん、そのパレットの白色とあっとるから、綺麗なんや。
世の中に単独で存在しているものなんか、おません。すべては隣り合うものとの関係の中に、存在する
んです。色も形も。私が好きな色?私の個性?私のセンス?そんなしょうもないもん、邪魔やから、捨て
てしまいなはれ!世界にある色と形を、黙ってじいっと見とったらええんや。そこにある綺麗な取り合わ
せを、物真似したらええんや。表現なんてもんは、気ぃついたらやっとったわ・・・くらいでええんだよ!」

フクウェ・ザウォーセさんの、音響的にも音楽語彙的にも重複の無い、澄み渡った当為の音楽はまさしく、
さかしらな表現
の存在しない、関係性の中にあって過不足の無い、そんな真の芸術なのであります。

                       ケンイチ・ナニワーノ (09.04.07)


           ブルンジ共和国 / 太鼓音楽



THE DRUMMERS OF BURUNDI

 REAL WORLD CAROL 2338-2

1992年作品 イギリス録音

 キーワード
アフリカの鬼太鼓座
 参考サイト
http://www.buildafrica.org/music/BI/95

ロックファンの方には、ジョニミッチェル「JUNGLE LINE」のあの太鼓といえば、お分かりいただけよう。

ズンズンズンズンズンズンズンズン ズンズンッ! ズンズンッ! (ウワーイ!)
ズンズンズンズンズンズンズンズン ズンズンッ! ズンズンッ! (ウワーイ!)
ズンズンズンズンズンズンズンズン ズンズンッ! ズンズンッ! (ウワーイ!)
ズンズンズンズンズンズンズンズン ズンズンッ! ズンズンッ! (ウワーイ!)

が、すべての30分48秒。
いかにも嬉しそうな「ウワーイ」の掛け声に心も躍るブルンジの太鼓は、世界屈指のアッパー音楽である。

ベターっとした八分音符を飽かず連打し続ける中太鼓軍団、雪崩のような重低音を轟かす大太鼓軍団
そして、甲高いリムショットで煽りまくる小太鼓軍団の、陸海空そろい踏んだ、太鼓絨毯爆撃音楽。(多分
そんな感じ) どこまでもストレート・アヘッドなそのリズム感覚は、かなりの程度和太鼓のそれに似通って
いる。

日本を代表する音楽集団 鬼太鼓座は、「太鼓を叩くことと走ることは同じである」とのポリシーに基づき、
世界のマラソン大会のゴール地点に大太鼓を設置し、42.195キロを全員で走破してはライブ・パフォー
マンスに突入、そのまま太鼓乱打に明け暮れたという逸話(僕的には美談)でつとに有名であるが、彼ら
ブルンジの太鼓軍団もまた、そんな絶倫音楽なのである。

そう、彼らブルンジ太鼓軍団こそは、アフリカの鬼太鼓座である。日本人にとって最も馴染みやすいアフ
リカン太鼓軍団といえよう。だから、あなたも聴きましょう。踊りましょう。
ブルンジ・ワッショイ!ブルンジ・ワッショイ!

            


                                   ケンイチ・ナニワーノ


           タンザニア共和国 / ターラブ音楽


 NYOTA  BLACK STAR & LUCKY STAR   
         MUSICAL CLUBS


  GLOBE STYLE RECORDS CDORB 044
            

      1989年作品 タンザニア録音
 キーワード
未知の鮭トロ
 参考サイト
http://www.brdf.net/fastforward/ffwd1101.htm

東アフリカの婚礼音楽 ターラブ・ミュージックの、開祖的2楽団をコンパイルしたアルバム。

実にビミョーな音楽だ。
アラブとアジアとアフリカ(ラテン)の各成分が均等に混じりあい、どれが主ともいえない空気の、そんな
無国籍音楽になっている。例えて言うなら、シャケとトロとご飯を33%ずつ混ぜたという感じ。具材
の内容自体は同じでも、これではとても、「鮭トロ丼」と呼べないのである。

ギィロとタブラとコンガ(?)が入り混じり、4/4拍子でラテンのツースリを打ったり6/8で西アぽかったり
するリズム。2少女により歌われるペンタトニック系の、イスラムぽかったりインド洋ぽかったりするメロ
ディー・ライン。ハネるリズム隊をベタァと塗りつぶす、オルガン・アコーディオン・エレキギターと大正琴
(?)。そのユルいオブリガードやテーマ・フレーズのルーズさは、むしろインドネシア音楽に近いものを
感じる。・・・という、わけわからなさでイッパイなのである。

トロっと濃い口なんだけど、喉ごしアッサリ。ベタァっと平面的なんだけど、どこか小気味よい。哀愁
も歓喜もない、水平で散文的な感情。右にも左にも偏らないという、中庸の中の中庸。しかしこのユル
さがなんともクセになる。他のどこでも聞けないような、一種異様な安穏グルーブなのです。

これはクセになります。日本盤も同じジャケで出てたので、是非中古で発見してください。名作!

                                           ケンイチ・ナニワーノ