放電特性記録機能付き
NiMH,NiCdバッテリ放電器の製作

2005-02-05

お知らせ                              (2005-12-23)
放電特性記録機能付きバッテリー放電器組み立てキットを頒布中。
詳細は、私の仕事場である(有)アクト電子
http://homepage3.nifty.com/act-ele/batdchg3/batdchg.htm
をご覧ください。

はじめに

 「充電式バッテリの放電性能を確かめてみたい」というのが製作した動機です。
2002年春に購入したミノルタのデジタルカメラ「DiMAGE7i」には、
単3タイプのニッケル水素電池が4本使われています。
この電池の「持ち」を確かめてみたくて、このバッテリ放電器を作りました。
単純に「メモリ効果解消のための放電」を行うのではなく、放電中の
「放電特性を記録したら面白いかも!」というのがきっかけです。
日常的に使えるよう、わざわざパソコンを起動しなくても記録を行えるように
しました。

 回路図や制御プログラムなどの詳細は、公開ソフトの収集・配布サイトである「Vector」
に登録してあります。


ライブラリ作品番号:PS307464
BATCK10放電特性記録機能付きNiMH,NiCdバッテリ放電器  1.0
    batck10.lzh (batck10.lzh)       03/11/15 684075
 ワンチップマイコンを使ってNiMH,NiCdバッテリの放電を行いながら特性を記録する
  http://www.vector.co.jp/soft/dos/hardware/se307464.html

設計方針

・最大4本の処理ができる。

    1本から4本、任意の本数を処理できるようにするため、一本ごと独立した
    放電・測定回路を設けます。   ただし、単3タイプの単電池専用です。

・定電流放電を行う。

    スイッチングトランジスタとパワー抵抗を負荷にしての放電では、抵抗の
    誤差とトランジスタの飽和電圧の差により4本とも同じ放電電流にでき
    ません。
    電池の寿命を調べる場合、個別の誤差は少ないほうが良いので、
    放電には定電流回路を使うことにしました。
    各バッテリごと個別に電流値を調整できるようにしています。
    現在は「1A」にセットしています。

・放電中の電圧監視にはマイコンを使い、液晶に測定値を表示する。

    10ビットのA/Dコンバータを内蔵したアトメルのAVRマイコン、
    AT90S4433を使って放電中の電圧測定と制御を行ないます。
    A/D変換の基準電圧を2.5Vにしたので、1ビットあたり約2.44mVの
    分解能です。
    4桁の数値で液晶にバッテリ電圧を表示します。

・測定結果はEEPROMに残す。

    設定した時間間隔で放電中の電圧変化を記録します。
    測定と同時に、RS-232Cによるシリアル出力も行うのですが、パソコンを
    用意しなくても本機だけで単独測定動作できるようにしました。
    記憶には256kビットのEEPROMを使っています。
    16バイトのエリアを1回の測定で使うので、2048データを記録できます。
    最短測定サイクル(10秒)にセットした場合は約341分の記録時間
    です。
    測定完了後にパソコンとつないで、測定値をシリアルデータとして出力
    することができます。

・測定中に停電が起こっても、バッテリから大きな電流が流れ出さないように
 しておく。

    バッテリをマイコンのA/D入力ポートには直接つながず、停電時
    でも入力がハイインピーダンスとなるOP-AMPを通します。

・パワートランジスタの放熱に注意。

    放電が始まると定電流回路のトランジスタで、およそ1.5Wの電力が
    消費され熱に変わります。
    熱抵抗20℃/Wの小型ヒートシンク(外形 25H×16×16mm)だと30度
    ほどの温度上昇となります。

・操作スイッチは3つ。

    「開始」「送信」「設定」の3つのスイッチで操作します。
    「開始」で放電を開始、「送信」で記録データのシリアル出力を、
    「設定」でパラメータ(測定時間間隔、放電停止電圧、基準電圧値)
    の設定を行います。

外観

 手組で組み立てたバッテリ放電回路の外観です。
すでにDiMAGE7iのトラブル報告やニッ水電池の特性調べなどで登場していますが、
その中身をご覧ください。

市販のアルミケースに組み込んでいます。
バッテリを挿入する電池ボックスも、普通の市販品です。

※これの苦労話(注意点)は、ダウンロードファイルの中に入っている製作レポートをお読みください。
全穴ユニバーサル基板に手組みした回路です。
放電用トランジスタに付けるヒートシンクは手持ちにあったアルミのLアングルです。
配線の様子です。
アルミケース上部に取り付けた電池ボックスまで電線を引っ張り出しています。
定電流放電を行う経路と電圧を測定する配線を分けて、電圧降下の影響が出ないようにしています。

回路図

※回路の詳細説明は、前述の「Vector」からダウンロードしたドキュメントをご覧ください。
 ここでは、回路図を示すだけにとどめておきます。
 (液晶モジュールの制御線「E」にプルダウン抵抗を書き加えました。 2005-02-05)

※組み立てた回路では、トランスを使って電源内蔵にしています。
 この図では外付けACアダプタを使うように描いています。

概略の操作

  ・測定(放電)開始

     「開始」スイッチを押すと放電を開始します。
    放電すべき電池が1本も装着されていない場合は、操作スイッチ待ちに
    戻ります。
     放電が始まると、設定した測定間隔でその電圧をメモリするとともに
    データをシリアル出力します。
     放電中は経過時間を「分・秒」で、測定した電圧値を点滅させながら
    表示します。
    設定してある放電停止電圧以下に電圧が下がると放電を止めます。
    放電が終わった電池は、放電持続時間を点滅なしで表示します。
    装着したすべての電池の放電が完了すると、放電完了です。
    放電実行中に「開始」スイッチを押すると、放電を強制中断します。

  ・放電完了

     放電を行なった電池ごと順に、「現在の電池電圧」「放電していた
    時間を時分秒で」「放電中の平均電圧」を2.5秒サイクルで表示
    します。
    通常は放電完了とともに無負荷になるので電池電圧は徐々に上昇します。

  ・データ送信

     「送信」スイッチを押すと、外付けEEPROMに記録していた放電中の
    測定データをシリアル出力します。
    出力データは「CSV」形式です。
     パソコンが無くても放電特性の記録ができるので、放電が完了した
    後、必要なときだけパソコンとつないでデータを吸い上げればよいわけです。

  ・設定

     「設定」スイッチを押すと「放電停止電圧」「データ送出サイクル」
    「基準電圧」の3つのパラメータを設定するモードになります。
    チップ内蔵のEEPROMにデータを書き込みます。

      1.放電停止電圧 : V-stop

        4桁の電圧値を表示します。
        0.01V単位で増減でき、最大値は1.5V、最小値は0.05V
        です。
        放電開始後、電池電圧がこの値以下になると放電を停止します。
        初期値は1.00Vです。
        メモリ効果を解消したい時など、深い放電が必要なときは
        0.80V程度に設定します。

      2.データ送出サイクル : Data TX cyc

        4桁の秒値で表示します。
        放電中の電池電圧を測定、記憶する時間間隔です。
        以下の設定値から選択できます。
             10秒  15秒  20秒  30秒  60秒
            120秒 180秒 240秒 300秒
        初期値は60秒です。
        サイクルを短くするとデータ送出する電文の量が多くなります。
        放電停止電圧のチェックは、この測定時間間隔とは無関係で
        たえず電池電圧の低下を調べています。

      3.基準電圧 : V-Ref

        4桁の電圧値を表示します。
        テスターで測定したTP5の電圧値を入力します。
        最大2.600V、最小2.400Vの範囲で0.001Vステップで
        可変できます。
        初期値は2.500Vです。
        この値を正確に入力しておかないと、測定した電池電圧に
        誤差が生じます。

使用例

 すでに別のページであれこれと「放電グラフ」をお見せしていますが、この放電器で測定した
データをパソコンへ送り込むことで、このようなグラフを描かせることができます。
 データの受信に、「ハイパーターミナル」を用いて測定データをテキストファイルとして
セーブ、その後、そのファイルを「エクセル」で読み込んでグラフを描きます。
具体的な手法は、ダウンロードしたドキュメントをお読みください。

 わざわざパソコンを使ってグラフを描かなくても、放電完了後に表示される
「放電持続時間」と「放電中の平均電圧」を見れば、電池の劣化具合、充電の成功・失敗
が一目で分かります。
 充電直後の様子を見たい場合は、少しの間だけ(ほんの10秒も)放電させてみて、
電圧低下の様子を見れば充電の失敗がすぐに判別できます。
 実際にこの放電器を使っていると、メモリー効果解消というための使い方より、
充電完了直後のバッテリの様子を見て「4本ともきちんと充電されたな」と、確かめる
ための使い方のほうが多いくらいです。

ニッ水電池の放電終止電圧について

2005-02-05

 この放電器では、放電終止電圧をちょっと低めの「0.8V」にして電池の特性データを得ています。
元来ニッ水電池の放電終止電圧は「1.0V」です。
なぜ0.8Vにしたのか・・・電池にカツが入って元気になるようなのです。
ところが、「松下」のニッ水電池についての資料を読みますと、1/0Vを切る放電を行うと
電池寿命に影響があると書かれているのです。
 どう影響があるのか具体的に述べられていて、
『電池電圧が1V以下になるときに・・・・負極の水素吸蔵合金が若干腐食する反応が起こります。』
つまり、放電が深くなると、通常とは異なる電気化学的な反応がおこり、そのせいで寿命が短くなる
ということなのです。
この話の詳細は、松下のwebさいとにある解説文をお読みください。

http://industrial.panasonic.com/www-ctlg/ctlgj/qACG4000_JP.html
ここの、「ニッケル水素電池共通情報はこちら」をクリックすると、以下のPDFが出てきます。
http://industrial.panasonic.com/www-data/pdf/ACG4000/ACG4000PJ1.pdf
http://industrial.panasonic.com/www-data/pdf/ACG4000/ACG4000PJ2.pdf
http://industrial.panasonic.com/www-data/pdf/ACG4000/ACG4000PJ3.pdf
http://industrial.panasonic.com/www-data/pdf/ACG4000/ACG4000PJ4.pdf

 また、この件を電池メーカに問い合わせしましたところ、『1Vを切る深放電後に電池が
元気になるのは一時的なことだ』というお話が出ておりました。
ということで、日常的な電池のリフレッシュは「1.0V」ということにしておきましょう。
放電末期の電圧変化をしらべたいとか、ニッ水、ニッカド以外の電池の特性を調べたい
というときだけ、低い電圧にするということで対応してください。
この放電器は、最初から放電終止電圧を変えられる設計にしていたので助かりました。