SMのカム・チェーンに付いて
MASERATIのチーフエンジニアであったIl Dottoreこと、Giulio ALFIERIがシトロエンの要求に応え
て僅か2ヶ月で開発した90度V6エンジンは、後にその信頼性が取り沙汰される事となり、
ALFIERI自身も、このエンジンは自分の経歴の蔭の部分であったと晩年打ち明けていました。
然し、彼の名誉の為に言うならば、トラブルの大半は、デリケートなSMエンジンに無知であった
オーナーと修理工場の怠慢が原因であったことは現在では広く知られているところです。
このエンジンの最大の弱点は、恐らく寸法上の制約の為に、自動チェーンテンショナーを備えて
いない事でした。SMのカムシャフトは、上図のようにクランクシャフト後方のプライマリーチェーン
から中間シャフト(同時に補機シャフトを介して前方の補機類を駆動する)を経由して左右バンク
夫々1本のセカンダリーチェーンに依って駆動される構造になっています。
セカンダリーチェーンは2万km毎の調整が必要ですが、テンショナーは、カムカバーを外せば調
整可能です。一方、プライマリーチェーンの調整、交換はエンジンを降ろさない限り出来ず、SM
オーナーに取って頭痛の種になっています。
SMのプライマリーチェーン・テンショナーです。
同時代のジャグアなどにも使われていたのと
同じ、極めてシンプルな構造の物です。しかし
このテンショナー自体に特に欠陥がある訳では
ありません。海外などではMERAK SS等に使用
されている油圧式のテンショナーに取替えた例が
報告されています。然し、SM WORLDのHathaway
氏に依れば、油圧式テンショナーは、チェーンに
余分の張力を掛け、チェーン自体の寿命を短める
のみならず、機械式テンショナーの限界を越えて
もチェーンを引張り続ける結果、チェーンカバー
のアルミを削ってしまい、アルミ粉に依って潤滑油
の通路を塞ぐなどの重大なトラブルのもとになる
ので、百害あって一利無しと断言しています。
機械式テンショナーでも20万km無交換で使用
出来た事例もあります。10万kmを目安に、新品の
テンショナーとチェーンに取替えれば安心だと
思います。尚、テンショナーの減り具合は、オイル
パンを外せば点検可能です。