| V 朱鷺の舞 宴が終わったあとのように、忠臣と裴遉が話し合っている。そこへ孤竹が入ってくる。 忠臣「おお、孤竹」 裴遉「機嫌をなおしていただけましたか?」 孤竹「さきほどは失礼しました。“お酒の相手はつとまりませぬ”など、不躾なことを申し上 げ、心よりお詫び申し上げます」 裴遉「それはこちらの失態です。許してください。美しい姫君たちの前で、みなも浮かれす ぎたのです。わたしとて・・・。 それにしても、あなたは強い」 孤竹「今おもっても恥ずかしゅうございます。ただただ怖かっただけなのです」 裴遉「わたしがですか?」 孤竹「とんでもございません。わたしと舞わせて頂いている者たちのことでございます」 忠臣「これ孤竹」 裴遉「ああ、まだお怒りなのですか?たしかに、帝よりお預かりしたことも忘れ、戯れが過 ぎました。あなたの言葉に、あの者たちも懲りたでしょう」 孤竹「お願いしたいのは、あの舞姫たちが、唐の長安まで行けるよう守って欲しいのです」 忠臣「お、孤竹」 裴遉、忠臣に目を配り、あらためて孤竹に応える。 裴遉「承っています。この命を賭けても、あの者たちを無事にお届けいたしましょう」 孤竹「この律令の時代に、なぜ彼女たちは海を渡らなければならないのか?そのことを疑 問に思うておりました」 忠臣「こちく・・・」 孤竹「あの者たちに聞きました。初めは哀しかったそうです。それはそうですね、わたしと て、父とともに都を離れる時は感傷的になりましたもの。 でも、あの者たちが都を離れるということは・・・」 裴遉「孤竹どの」 孤竹「・・・。ここで、裴遉さまの心遣いに接し、あの娘達ももとに戻りました。都にあっては 道真さま、ここにあっては「遉さまと。今までと変わらぬ暮らしに落ちつきを取り戻したの でございます。 一生懸命学習に打ちこむ姿に、かえって孤竹のほうが、羨ましく思ったぐらいです。で きればこの孤竹も、学びたいほどでございます」 忠臣「それはならぬぞ。彼女たちの心を乱す」 裴遉「あなたも読み書きはできるでしょう」 孤竹「詩は自分の気持ちを表します。舞もその心が舞うのです。ただ舞うだけでは、異国 の者を珍しがっているだけです。そのあとはどうでしょうか?彼女たちは学問を身につけ ているから、暮らしに困ることはないかもしれない。 でも、任務を遂行するために、それだけで叶うでしょうか?彼女達にしかできないもの を持つ必要があるのではないでしょうか?」 忠臣「なにを言いたいのじゃ、孤竹」 孤竹「詩の意味がわかれば、自分なりに舞うことはできるでしょう。もし、合わせて歌おうと するなら、ことばも音楽にならなければなりません」 裴遉「するとあなたは、向こうの漢詩(ことば)に合わせて舞うつもりですか?」 孤竹「はい、日本のことばで舞を見せても、伝わるはずがありません。そのことを、あの宴 で教えられました。 でも、あの人達のことばを舞で現せば、もっと心を入れていただけるのではないでしょう か?」 裴遉「おお、確かに」 孤竹、裴遉に礼をとる。 孤竹「今までのことをお許しを願うために、創作の舞をお見せしたいと思います」 忠臣「おお、例の」 裴遉「忠臣殿から聞いておりました。それはもう、見られないものかと」 孤竹「この舞は、彼女達に贈るつもりで創りました。大和ことばでの舞ですが、裴遉さまに は見ていただかなくてはならないと思いました。舞姫たちも控えております」 孤竹、舞の準備に入る。孤竹が舞だしてから、次々と舞姫たちが参加していく。 ![]() コメント:五節舞(ごせちのまい) その起源は、天武天皇(在位673〜686)が吉野の離宮で琴を弾いておられると、天女が天降って「乙女ども、乙女さびすも唐玉を、袂にまきて、乙女さびすも」(大歌)の歌に合わせ、五度袖をひるがえして舞ったのをかたどったものと言われています。 孤竹「みなそこの かいがらひろい うらなえば」 舞姫1「こどもことばが」 舞姫2「つづられてをり」 舞姫3「いのちより」 舞姫4「おもいことばが」 舞姫5「しるされし」 孤竹「もみじをたむけ」 ごせちのまいを」 舞姫1「からくにも」 舞姫2「ゆめにみるなば」 舞姫3「ちかかりき」 舞姫4「にょにんぶがくは」 舞姫5「さとにかえらむ」 コメント:朱鷺の活動7月〜11月の間は、活動の活発期間で、活動範囲は広くなり、平地や丘陵のダム、池、川、渓流などのほとりで餌を探し、12月〜翌年2月は越冬期で、主に巣の近い水田で餌を探し、3月〜6月は繁殖期に入り、活動範囲が安定し、巣の周辺と山の中腹にある水田で餌を探す。 孤竹「ころもうつ」 ときもなくらむ ふるさとの」 一同「やまかわたにの うつくしきかな」 一同「やま・かわ・たにの うつくしきかなぁ」 Wのあらすじ 裴遉は、ふるさとへの想いを中国語で歌いだす。孤竹は、それを見入るように聴いている。 |