美容外科医・医院の選び方、3
医院の形態で選ぶ
同じ名前で全国に10、20もの医院をつくっている
チェーン医院は選ばない。
A.美容外科医・医院の選び方で特に大切なことはチェーン展開している美容外科医院にかからないことだ。
Q.チェーン展開って?
A.「○○美容外科クリニック 東京本院 札幌 仙台 千葉 横浜 名古屋 大阪 福岡」などと、同じ医院名で全国に10、20の医院をもっている美容外科医院。これは絶対ダメ。
Q.あれって便利じゃない。英会話スクールか何かで「駅前留学」って宣伝文句があったけど、東京に行かなくても自分の住んでる近くで美容外科の最新治療受けられるんだから。それに「○○美容外科クリニック」って私達の仲間みんな知ってるよ。ブランドだもん。私もあんなところで受けたいよ。
A.どうしてブランドだって思うの?
Q.そりゃあれだけ女性週刊誌にもタウン誌にもテレビにもきれいな広告出してるし、やっぱり
はやってるからお金も儲かるんだし、人気もあるんじゃない。テレビでもタレントが出てすっごくほめてたよ。
A.ところがああいう美容外科医院がいちばん危ないんだ。
Q.エー、どうしてさ。
A.内科とか耳鼻科とか、美容外科以外の病院や医院だったら、院長や勤務している医者の診察や治療を受けた患者が、「あそこの医院はいいよ」「あそこはダメ」と口コミで評判が広がるだろ。
Q.そりゃそうだよ。私の近所でも、朝から行列してる医院もあるよ。すぐ近くの医院はいつもガラガラなのに。
A.ところが日本では美容外科の手術を受けたことを患者が隠すので、いい病院も悪い病院も口コミではなかなか評判が広がらない。しかもいい加減な美容外科では医療事故がよく起こるからそのたびに新聞などで報道されると「あそこの病院は危ない」「あの医院だけは行ってはいけないよ」と患者が来なくなってしまう。
Q.そんな医院ってそのうちつぶれちゃうよ。
A.ところがそこでお金儲けの上手な美容外科医とその取り巻きが考えたんだ。
「美容外科ってのは口コミでは評判が広がらない、じゃあいい治療をしてもいい加減な治療をしてもおんなじだ。それよりも今までどこの医院もしなかったような思いっきり派手な広告を出せば、それで患者はくるんじゃないか」と。
それで医院の宣伝としては信じられないような大金を広告料につぎ込んで、女性週刊誌、タウン誌、テレビなど若い女性が見るようなありとあらゆるところにその医院の広告を派手に出して、その医院が一流の美容外科であるかのように見せかけて患者を集めようとしたんだ。
Q.うまくいくのかな?
A.しかもそれだけ広告出すんだから、東京に医院を作るだけではもったいない、治療の内容や医者のレベルはどうでもいいから、全国各地に同じ名前の美容外科医院を出来るだけたくさんつくれば広告の効果も上がると考えたんだね。それで「○○美容外科クリニック 東京本院 横浜 名古屋 大阪 広島 福岡札幌」といった、多いところでは20とか30の医院を持つ美容外科クリニックの全国チェーンをつくって、ものすごい量の広告をやり始めた。
Q.へえー。
A.そしてその作戦は見事に成功。そのクリニックは患者がいっぱい来て大儲け。それだけじゃない、「こんなに宣伝するくらいだからきっと一流の美容外科に違いない」ってブランドになったちゃったんだ。それを見て他のいい加減な美容外科医院も「そうか、あんな風にやればいいんだ」ってんで、われもわれもと広告費をつぎ込んで、みんなブランドになっちゃったんだ。
Q.私もその「○○クリニック」のほかに美容外科のブランドいっぱい知ってるよ。美容外科の手術受けるんだったらその中のどれを選ぼうかなって思ってるもん。
A.そうだろうね。ところでそういう美容外科クリニックって、年にどれくらいの広告費用を使ってると思う。
Q.5000万円とか一億円、もっと多いかな、3億円くらい。
A.ちょっと甘すぎるよ。それくらいじゃ中身がないのにブランドにはなれない。なんと年間広告費が一つの医院で60億円から70億円。そういった美容外科医院の年間広告費用を総計すると、数百億円。美容外科の広告収入がなくなると、女性週刊誌のほとんどが収入不足でつぶれてしまうんだって。
Q.げげっ!
A.逆に考えると、数十億円の広告費を取り戻そうとして、派手な広告に惑わされてやってきた患者を、考える時間を与えないで何が何でも早く手術をして、二十万円、三十万円のお金を出させて、さらに「あなた鼻も低いね、この際やったら」と、患者のコンプレックスを刺激して患者が望まない手術でもやって、さらにお金を出させるようなことをしないと経営していけないんだ。それでそういった美容外科医院は一日何百万の売り上げを上げて、スタッフの医者でも年収数千万円の収入だとか、そんな世界になっている。
Q.そんなところで手術する医者ってどんな人?
A. チェーン展開をするために急に医者を集めようとしても、形成外科を十年も二十年もやっている医者は来てくれない。給料も高い。それで地元でとにかく医師免許を持っている医者を雇って、二重まぶたの「埋没法」やシリコンを入れる鼻の手術など、簡単でトラブルの起こりにくい技術を一週間くらいで見よう見真似で教えて、治療させる。患者がデリケートな希望を出したり、結果に満足しなかったりした時にはどうしようもなくなる。
Q.じゃそんな時はどうするの?
A.少し難しそうな手術は形成外科を出た医者を高給で雇っておいて、全国を回らせている。
Q.でもそんなんじゃ、あとのケアができないじゃない。手術を受けた患者は満足しないよ。
A.だから、いつまで経っても、口コミで「あの美容外科医院はいいよ」などと評判が拡がらない。そこでますます派手な広告を出して、患者を集めているんだ。最近はテレビ局が作ったかのようなヤラセ番組をつくって、タレントにペラペラ無責任なことをしゃべらせて、最後にその番組にお金を出している美容外科のコマーシャルを何気なく入れるなんて手の込んだこともやっている。
Q.まあ、何億、何十億も広告費をもらっていたら、出版社やテレビ局もその美容外科の悪いことを書いたり報道したりしないわね。私だってお金たくさんもらったらテレビに出てそこの美容外科のいいことばっかりペラペラしゃべっちゃうよ。
A.少しはわかってもらえたかな。
Q.いつも不思議に思ってるんだけれど、美容外科にはチェーン展開をやっている医院っていくらでもあるけれど、ほかの科ではチェーン展開って一つもないよね。眼科でチェーン店なんて聞いたことがないよ。メガネのチェーン店ってあるけれど。
A.日本では、美容外科以外のすべての科は保険診療といって、診察費は7割くらいが国民が納めている健康保険料から支払われる。「こういう治療をするとこれだけ支払いますよ」ということが決められていて、医者はそういう治療をして、毎月末になると「私は今月こういう治療をこれだけの数、しました、それに見合った報酬を健康保険から支払ってください」という請求書を国に出す。国はその請求書をチェックして、決められた治療を本当にしたのかどうかをいろいろな方法で確かめて、医者に支払うわけだ。
Q.私が毎月支払っている健康保険料から支払うんだね。
A.そう。だからたとえば眼科でチェーン店を作って、眼科のことを知らない医者を院長にすえたり眼科の治療をさせたりして、国に請求書を出しても、いろいろチェックが入って、保険からお金が支払ってもらえない。
Q.それが当たり前だね。
A.また眼科医には「日本眼科医学会」があって日本医師会に入っていて、厚生労働省、医師会などの指導があるから、あまり変なことはできない。
眼科医の出身大学の教室でも自分のところから変な医者が出たら困るから、いろいろ指導する。普通の医者は二重・三重にチェックを受けているわけだ。
Q.うんうん、そういうチェックしてもらわないと困るよね、悪い医者だっていっぱいいるんだから。
A.ところがこういうチェックが、美容外科医にだけは、厚生労働省からも日本医師会からも大学からもまったく無くて、野放しなんだ。
Q.どうして? チェックしなかったら人間って必ず悪いことするもんだよ。
A.まず美容外科は健康保険が適用にならない。健康保険は病気にだけ適用されて、正常な状態をもっと美しくしたいという、患者の希望で治療を受ける美容外科には適用されない。
Q.そりゃそうだ。誰かが勝手にきれいになりたいと思って、私が払っている健康保険のお金使ったら、私は怒るよ。
A.だから、ほかの科のように、治療の基準がなくて、どんないい加減な治療をしても、常識はずれの治療をしても、後に後遺症が残って患者が苦しんでも、死亡事故が起こって警察が介入しない限り、だれもチェックできないんだ。クレームつけてもほとんど示談金で解決さ。
Q.そりゃ凄いお金儲けてるんだから、少々の示談金なんて安いものだわね。
A.治療費も、すべて患者と医者の直接取引き。一万円しかかからない治療でも、100万円請求して、患者がそれを支払ったらそれでいい。実際、レーザーが日本に輸入された最初の頃は、大学病院の形成外科でなら2万円くらいでできる同じ治療をして、美容外科医院では100万円取ったということはいくらでもあったんだ。
Q.じゃあ、美容外科医はどこでチェックをうけているの?
A.医者としての自分の良心だけさ。
Q.良心!? そんなん弱いもんだよ。大金積まれちゃたらいっぺんでなくなっちゃうよ。私自分のこと考えればよくわかるよ。
A.まあいい加減な美容外科医院でも、現場で働いている医者は悪い人ばっかりじゃないだろうし、「こんなことでいいのかな」と思っているのだろうけれど、よその病院で働くより給料もうんと高いし、よほど変なことをして患者を死なせたとしても、せいぜい数か月の医師免許停止程度だし、まわりがみんな同じ状態だから「ま、これでいっか」とやっているのだろうね。もちろんそういう美容外科を経営している医者は、患者のコンプレックスを食いものにしている、人間として許せない存在だ。
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